今日は丸一日薬師谷を釣り歩く日であり、更には三回忌の法要という大事なミッションもあるのだ。
昨日の話では、ここ一週間雨が続き、川は増水で釣り人は入れていない。昨日、栃木のルアーマンがバンガロー上から堰堤まで釣り上がったことはわかっている。であるなら、我々は朝一番で堰堤上に入渓し、そこから釣り上がれば爆釣間違いなしではないか!という推理が働いた。であるなら、ノンビリ朝飯など食べている場合ではない。早速釣り支度をしてさきもり号と共に堰堤上の空き地まで林道を登って行った。『ウシシシッ!まだ釣り人の車は一台も存在していない。この領域は我々の貸し切り釣り場だ』と笑みがこぼれ、釣り欲がこみ上げてきて、入渓点までついつい早足になってしまった。

バンガローの朝!冷気が漂い、朝日による温もりが有難く感じてしまう。世間では温暖化、温暖化とうるさく言っているけど、こんなに涼しい夏は寒冷化ではないかと思ってしまう。

バンガロー脇を流れる薬師谷の支谷。この流れでもイワナは釣れるが、今日の我々はこのような流れは眼中にない。あくまで、薬師谷本流での尺イワナだ。

フライパンにメンチカツを入れ、蓋をしてしばしバーナーで温める。取り出して、その次にバターを入れて溶かし、スーパーマルイチで買ったマフィンを焦げ目がつく程度に温める。

岩手で有名なスーパー"マルイチ"には、写真上の"コーヒーサンド"が売られていて、防人は気に入ってしまっている。朝食はこれと、先ほどのメンチカツサンドマフィンとカボチャのスープだ。

さきもりちゃんのメーターは、名古屋からの総走行距離が1000㎞を越えていることを示していた。

堰堤上の林道わきにさきもりちゃんを停めて、下流に歩いて、堰堤上から入渓する。この時、かわいい小熊に遭遇した。

この日最初に釣れたイワナ。作ったプールに彼を入れて、御線香とろうそくを立てて、オヤジの三回忌の法要を行ったのだが、彼(イワナ)にしてみたらいい迷惑だっただろうなぁー!

防人が釣る前にYa氏も同じ場所を釣っていたらしいが、まったくアタリは無かったのこと。まあ、防人様が毛ばりを操ると、いとも簡単にイワナが飛び出してくるのダス。天才ですな。

きたぁーッ!尺イワナですな。アメマス系かと思いきや、朱点がお腹の辺りにあるので、ニッコウイワナとのハイブリッドかなぁー?兎に角、手ごたえは最高で、何度か下流に走られて、スリリングなやり取りを満喫しやした。

上側を木の枝が覆っているので、サイドキャストで毛ばりを投げ入れることしか出来ない。Ya氏に解説しながら、毛ばりをドリフトしていると、物静かに毛ばりが吸い込まれたのだった。

周囲には赤とんぼが飛びまくっていて、谷は秋への準備に余念がなかった。奥は子供の心で川を満喫するYa氏。

再び尺イワナッ!やはり増水後の谷は最高だ。このイワナも中央のお腹辺りがわずかに朱点があるような無いような?

一回フッキングに失敗して、20分ほど時間をつぶしてから、毛ばりサイズを一つ落とし、釣り糸も細くしての再挑戦で釣りあげたのだった。

今度は29㎝のイワナ。良型が立て続けに釣れて、脳みそが蒸発状態の防人である。めったにないコンディションの川に入渓できたことは、本当にラッキーであった。

一投目のドリフトで、何の疑いもなく毛ばりをくわえ込んだのだ。この日、防人は24~32㎝のイワナを10匹ほど釣り上げたのだった。

まだ水位は高いが、明日はもっと良い状況になるだろうが、我々は明日は下北に移動の日だ。断腸の思いである。
今回の薬師谷では、横沢温泉に向かう林道上で小熊に二回遭遇した。熊スプレーを噴射するような緊迫したものではなかったが、小熊がいたという事は近くに母熊がいる可能性もあるわけで、お母さんが怒って飛び出してこようものなら、こちらもひとたまりもない。そんなわけで、早池峰山荘に報告に行ったところ、この日は東北弁ガンガンのオジサン(といっても、もしかしたら防人より年下かもしれないが!)が対応してくれたのだが、
「横沢温泉に向かう林道沿いに小熊がいたんですけどぉー…」
「ああー、あそごに小熊がよく現れるんだぁー。どごがに親もいるかもしれないだども〇×▽☆◆…。こちら側の谷にも熊の親子がいでぇー、〇×▽△◆☆×…、まあー、熊のほうが先住民だもんで、我々が彼らのせいかづ場所に踏み込んでいるっから、まあ、ながよくやってけれッ」
「はぁーッ!」
「ぐまスプレー持ってる?んだばぁー、もしぢがよって来たなら、シューシューやってけれっ」
「わかりましたぁー!」
てな感じで、なんだか拍子抜けしてしまった。兎に角この北上山地の熊と人間は割とうまく付き合っているのかもしれないと思ったのだった。

火曜日は横沢温泉がお休みなので、宮古の"旭湯"という昭和の面影が残りまくりの銭湯に立ち寄った。内装も訪れてくる人々も(背中全体に刺青がある極道の方もいらして)すべてが昭和であった。宮古市にはもう一つ"福島湯"という銭湯もあるので、次回はそっちも行ってみるかな。

お馴染みの岩場で夕飯作りを開始。と言っても、今回はご飯を炊くわけでもなく、宮古のスーパー"マルイチ"で買ってきたお惣菜を適当に温めるだけなので楽チンだ。防人がご飯を作っている(温めている)間に、Ya氏は焚火の準備をして、飯が出来上がる頃には暖かい焚火のもとで、ゆっくりと飯を食らうことになるのだ。

ピリ辛チキンソテー、フライドポテト、マカロニサラダ、ゆで卵、そしておにぎりがこの日の夕ご飯の内容だ。飯後にコーヒー豆を挽いてコーヒーを淹れ、Ya氏の奥様が今回の旅用に用意してくれた"鎌倉"というところの美味しいお菓子で優雅なカフェタイムを満喫。素晴らしい二日間であった。
今回の薬師谷はたまたま偶然の好機に恵まれた。一週間の長雨で釣り人が入れず、我々が到着した時に増水気味、次の日やや増水、とくれば三日目、四日目は最高の釣り状態になるはずだ。釣果という視点から考えると、このまま滞在しここ周辺の各谷を釣り回るのが得策なのだろうが、我々は魚が釣れた釣れないなどという世俗的なことに興味があるのではなく、あくまで、海の見える所でイワナを釣るという崇高なロマンを追い求めているのであーる。だから、我々は明日断腸の思いでこの場所を離れ、下北半島に移動しなくてはならないのだ。宿も予約してあるし、今キャンセルしたらキャセル料がぁー。クゥーッ!こんな10年に一度あるかないかの最高の状況の谷を離れなくてはならないとは、おおーッ、神よぉーッ、何故あなたはこのような試練を我々にお与えになるのかぁー。アッ、そうだ、我々は崇高なロマンのために今回の旅に出たのだった。忘れていた忘れていた。明日のロングドライブのためにさっさと寝なくてはね。それではおやすみなさい。


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