Defenderピヨピヨ日記(NO19 名古屋人の心の故郷珈琲処コメダ本店)

Defender購入後日記

 9月24日の日曜日、前日に娘が信州から自転車で帰ってきたこともあって、早朝のコメダ本店(名古屋市)に家族4人とさきもりちゃん(我が家のDefender90)で出かけてきた。朝、6時15分ごろ本店到着。オープンは6時30分からだが、次から次へと車が入ってきて、みんな車で待つのではなく店内にどんどん入っていく。実は、本店は6時から店内に入ることが出来るのだ。この時間帯に来る客の多くは本店の常連さん達である。6時半になると、お水とかオーダーを取りに店員さんたちが各テーブルを回り始めるのだが、常連さんにはお水とおしぼりを渡すのみである。店員さんたちは常連客のオーダーを熟知していて、何も言わなくても、この人はミニサラダもつける、あっちの人はパンの焼き方はこんがりと、向こうの人はコーヒーはアメリカンだった、…などと瞬時に判断していく。このような光景を「こういうレベルの人々が”ザ常連”ということなんだなあー!」と毎回呆気に取られて、時に羨ましく思って見ている防人なのであった。

1968年というと、コメダ1号店がオープンした年だ。名古屋上山(カミヤマ)とはコメダ本店があるところだ。1号店の菊井店は今はない。また、名古屋市東区の葵店の上にはコメダ本部機能がある。
昔のコメダ本店。増設を繰り返して、迷路のような店内だったが、僕はその雰囲気がとても好きだった。朝から仕事があるときは、早朝コメダでよく仕事の準備をしたものだ。しかし、常連の仲間入りへの道はいまだ遠い。
旧コメダ本店をレジ(入口)側から見るとこんな感じ。右側には、増設された奥の客席に行く通路や二階に上がる階段などがある。雨が降ると、雨漏りもしてお店の人は大変そうだった。しかし、夜店舗の前を通ると光の洩れ方がとても奥ゆかしくたまらない感じを演出していた。
旧コメダでの早朝モーニング。アイスレモンティーのシロップなし、バタートーストのC(小倉アン!いかにも名古屋的)が付く。更に、ゆで卵とヨーグルトを追加するのが僕の朝のメニューなのだが、時たま行くだけなので、店員さんには覚えられていない。常連への道は険しい。

 珈琲所コメダ珈琲店の第一号店は名古屋西区の那古野(なごの)の菊井店である。その後、1977年に瑞穂区上山店(今回我々が訪れているのはここだ)がオープンすると、現在のコメダの原型が確立していったようである。この時にあの有名なシロノワールも誕生したということだ。最初の頃は毎日売れ残り泣く泣く捨てていたようであるが、徐々に人気が出だして、現在では看板メニューになった。そして、2023年(の今年)には1000店舗出店記念と言うことで、この一年間は、ミニシロノワール無料、モーニングのパン追加無料、チケット購入した人々への特典、…などの色々なサービスを展開していくようなので、コメダから目が離せない1年となりそうだ。

実は、ここで書いた知識は上の写真の本
「なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?(高井尚之 プレジデント社)」
からの受け売りである。コメダ博士になりたかったら、この本を読めば店員さんよりある部分ではコメダのうんちくを語れるようになるかもしれないし、店舗へ行くのが楽しくなること間違いなし。ちなみに、店名の"コメダ”の由来についてもこの本には書かれているよ!
本店の旧店舗と4世代目のパジェロGR(MT)。この写真で見ると、旧店舗がいかに入り組んでいたかがわかる。隣(写真左)では新店舗が建設中。
本店の新店舗と新型ディフェンダー90(我が家のさきもりちゃん)。大体同じ場所から撮影しているので、旧店舗と比較すると面白い。
旧店舗に入ろうとしている娘。時間は6時ちょうど。これから早朝コメダスタート。
新店舗に入る常連さん達。時間は6時15分。これから早朝コメダ―スタート。

 僕が大学生として名古屋に来たのは平成元年(1989年)である。理論ぶつり学を学ぶことを夢見て、期待に胸膨らませて名古屋ライフを始めたのだった。その数年後には”ぶつり”の”ぶ”が取れて、”つり”の研究になるとは、その当時は知る由もなかった。僕の通った大学の理学部は学生同士の自主セミナーが盛んで、色々な自主ゼミグループがあった。また、年に一回夏には自主ゼミ合宿というイベントがあって、避暑地に大学生、院生などが一週間集まってみっちり数学や物理学の勉強会を繰り広げるというものだった。自主セミナーとは、読みたい本を同志を集めて週一回くらいのペースで、代表者が該当する部分を説明しながらその本を読み進めていくという勉強スタイルのことである。大学の本は難しいので、一人で読んでいるとほとんどの場合、途中で挫折することになる。そこで、3~4人で集まって、交代で内容を発表し合って、それについて質疑応答を活発に進めていくと、独りよがりにならず難しい本が読破できてしまったりするのだ。意欲に燃えた一年生の僕は早速、大森英樹氏が書いた”力学的な微分幾何”(力学、熱力学、電磁気学、相対論を微分幾何という数学を通して俯瞰しようという意欲的な本)を読もうとしている自主ゼミに参加することにした。よくわからずに、トップバッターで発表者を引き受け、よくわからないまま準備し、ゼミで発表を始めたのだが、黒板に書いた最初の一行目の数式に猛烈な突っ込みが院生を中心に始まった。苛烈な質問に答えられずにしょぼくれていく僕、それとは対照的に院生や教授はエキサイトして熱くなっていく。どんどん早口になって行き、専門用語が連発されるようになり、日本語でしゃべっているはずなのだが、我々一年生には何を言っているのかさっぱり聞き取れない。地底を彷徨う一年生、天空に向けて上昇し励起していく先輩、院生、教授!こッこれが大学の勉強風景なのかというものを目の当たりにし、また、本の読み方の甘さを痛感し、人前で発表することの厳しさを身に染みた初日だったことを今でも鮮明に覚えている。そんな過酷なセミナーが終了し、放心状態になっている僕のところに、同期の仲間がやってきて、

「滝ノ水公園に行かないか!夜景がきれいらしいぞ。それに、女の子もナンパ出来ちゃったりして。フフフッ」

と誘ってきた。放心状態であったが、彼の言葉の最後の”ナンパ”というフレーズに心動くものがあった。というのも、僕が理論物理学を勉強しようと思った理由は、”相対性理論”とか”量子力学”とか”ヒルベルト空間”とか語っていると女の子にもてるのではないか、知性溢れる素敵な人と思ってもらえるのではないかと真面目に信じ込んでいたからなのだ。そんな、しょぼい理由で大学の学部を決めたのかとおしかりを受けそうなのだが、事実なので仕方がない。だから割とあっけなく数年後には”ぶつり”の”ぶ”が取れてしまったのかもしれない。兎に角、その滝ノ水公園とやらに行って、夜景や夜空の星を見る女の子たちに

「お嬢さん、夜空の星が見える理由をご存じですか。量子力学によると、光は波でもあるけど粒子でもあるのです。光の粒子的振る舞いがあなたの瞳に夜空の星を描き出しているのですよ。まあ、しかし、夜空の美しい星々も、お嬢さん、あなたの美しさには遠く及びませんが…」

なんてナンパしたらキャンパスライフに彼女も出来てウヒョウヒョッかぁーと妄想が膨らみ、即行こうということになった。そいつの運転するガタピシャ音がする中古車で、貧相な身なりの男4、5人で行ったのだが、到着してみると、女の子なんかいやしない。よく見ると、夜道を柴犬を連れて散歩する近所のおばちゃんや、おじいさんがいるだけだ。

「おいッ!女の子は何処にもいないじゃあないか」

と僕が言うと、

「オレは名古屋の夜景がきれいと言ったのであって、女の子のナンパは二の次だよ」

との答えが返ってきた。「確かにそうだったかな!」と思い直して、周囲を歩いていると、視界になんだかオレンジ色に輝く暖かい感じのCafeが目に入ってきた。なんかとても明るい感じで、一人暮らしを始めたばかりの少しホームシックになっていた?僕にはとても眩しいくらいに感じた。ゼミでボロボロになり、大学での勉強の厳しさを味わい、ナンパの下心があっけなく不発に終わり、…といった状況がよりそのCafeというか喫茶店を暖かいもに見せていたのかもしれない。ただ、その時、そこのお店屋さんに入ろうとはならなかったのが不思議だ。喫茶店だという認識がなかったのかもしれないし、財布の中身が寂しかったからかもしれないし、そもそも、そこの店屋の名前さえも確認しなかった。滝ノ水公園からの名古屋の夜景のことはさっぱり忘れてしまっているのだが、オレンジ色の明るい、暖かい感じの店屋さんのイメージは今も鮮烈に憶えているのだ。数年後、奥さんと愛車のパジェロ(インタークラーターボ2800㏄)で滝ノ水公園を通りがかった時、その近くにあったコメダに寄ってバナナジュースとシロノワールを食べた時、ここがあの時オレンジ色に輝いて見えていたお店屋さんだったと認識し感動したのだった。

新店舗のレジ横に飾られている絵(中央)は旧店舗を描いたもの。しかし、よく見ると、旧店舗で撮影されたお客さんたちの膨大な写真群を切り貼りして構成されている。驚きだ。
新店舗では二人掛け席、お一人様用の席も充実している。二階席も多く、また、店舗隣にはコメダ系列の"甘味処おかげ庵"もあるので、そっちに入店することもできる。
中央はローブパンで、シロノワールのパン生地と同じもの。更に、息子のトクチンはポテチキ(ポテトと唐揚げ)も注文する不経済なヤツ。中央上はコメダのバナナジュースだ。
中央は僕が注文したトーストパン。塗られているバターは店舗によって増減する。基本多めに塗られることが多いので、その時は注文時に少なめと言えばよい。

 昔のコメダはレシートの裏に店舗一覧が載っていて、それがだんだん増えていくのを見て楽しんでいたのだが、現在は、1000店舗を越えてもはやレシートの裏では足りなくなってしまったようで店舗一覧はなくなってしまった。当時は全店舗制覇なんて妄想もしていたけど、1000を超えるともやは見果てぬ夢。僕の実家の山梨にもコメダがあるし、この前の大宰府旅行では帰路の尾道のコメダに寄ったりもした。ことコメダという文脈の中では名古屋が総本山と言うことになる。だから、この意味で地方のコメダに寄るとなんだか、本社の社員が地方の支社に出張に行ったような感じで、マウントを取ったような、威張った気分になって、

「オレはコメダ本店に通う客だ。なんか文句あるか!」

「モーニングのトーストは、まずゆで卵でトーストの三分の一を食し、残りの三分の二にあんこを塗り食するのがオレ流だ。なんか文句あるか‼」

的なフレーズが僕の頭の中を駆け巡るようになる。そして、お会計の時は間違ったふりをして本店のコーヒーチケットを出してチラ見させ、本店の常連客の雰囲気を醸し出したりしてね。そんな、本店の威を借る防人だが、本店では「いつもの…!」といってもいつものメニューは出してもらえない、常連客とは程遠い下級客なのだ。本店常連への道のりは遠い。

この"本店"のハンコが付かれたコーヒーチケットこそが、地方巡業した時、黄門様の印籠のような威力を発揮…しない、する訳がないのに勘違いし続けている防人である。

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