月に一度(~二度)、山梨の実家に戻り、本の整理&オヤジ殿の買い物、会食を行っているのだが、松本の娘の所にも寄って「飯でもおごるか」となると一日ではとても無理なので宿泊する必要がある。宿泊となれば、今は亡き母と姉が八ヶ岳に建てた別荘の風通しも兼ねればよいかとなる。であるなら、魚さんの生態調査もかねて(要は釣りをしたいだけ)、二泊くらいするかということになり、有休をとってウキウキと出かけることになってしまったのだ。
まず、初日は別荘に向けてドライブとなるが、釣という大事なイベントもあるのであまりドライブコースを冒険するわけにはいかない。いつも通りの国道153号で飯田まで行き、諏訪南まで中央道、そこからは八ヶ岳ズームライン、八ヶ岳高原道路を経て別荘へ。窓を開け、掃き掃除、拭き掃除をして昼飯の弁当を食べて早速釣りの支度。今日は金峰山(山梨的には”きんぷさん”or信州的には”きんぽうさん”)に源流を持つ金峰川(千曲川の支流)を釣ってみたのだが…。結果はボウズ(一匹も釣り上げることが出来なかったということ)。現地で先行の釣り人に
「どうでしたか?」
と尋ねてみたが、その人の答えも思わしくなかった。そのため期待が薄れた状態で川を釣り上がったのだが、途中、イワナ君が二回ほど僕の毛バリに反応した、反応したと思う、いや、もしかしたら幻覚だったかなあー…!以前、アウトドアチャーハンで行った段戸川は濁流でボウズ、その後、もう一度行った段戸川は水量もいい具合だったのにもかかわらずボウズ、そして、今回と合わせて三連続ボウズ。ブログの管理人のプロフィールに書いた『釣りは三才の時から英才教育を受ける』という記述を削除したい気分になる。まあ、僕の場合、体力とクライミング技術を駆使して源流部に入り、あまり釣り人に攻め立てられていない無垢なイワナを釣ることが得意なのであって、連日のように釣り人に攻め立てられて学習し、スレまくったイワナ、アマゴは得意でないという現実がある(これは釣りの腕が低レベルというこか⁉)。そして、この三回の釣りはまさに人がよく入る区間でやっているので当然の結果かもしれない。別荘で夕飯を作り、食後は諏訪パーキングのパン屋さんで買ったアップルパイでコーヒーを入れてのんびりタイム。山の地図を眺めながら地形をイメージし、今後の釣りの妄想にふけっていると、気が付くと次の日になっていたので慌てて寝ることに!

雨戸を開けて、窓をオープンにし、掃き掃除、拭き掃除の開始。別荘の管理は大変だ。

さきもりちゃんの荷室を見ると、釣り竿が。これは僕に釣りをしろという命令に違いない。

不穏な顔つきのさきもりちゃん。今日の僕のボウズを予見していたのか!

金峰川の流れは美しく、水は澄み渡っている。しかし、魚影は少ない。

左の皿のお肉は地元のスーパーで買ったカルビだが、めっちゃくちゃ硬くて噛み切れなかった。包丁で細かくして炒め直し。

アップルパイとコーヒーとピヨピヨ兄弟に囲まれて、のんびり山の妄想にふける。気温湿度もちょうどよく(寒いくらい)、最高のひと時。
二日目は、山梨のオヤジ殿の所に行き、本の整理、買い物をすることになっている。別荘から野辺山に向かい、川上村のレタス街道を走る。そこから県道106号に入り、信州峠を目指す。この川上村はレタス栽培に力を入れていて、360度すべてレタス畑が広がっている。信州峠を越えると道は山梨県に入り、クライミングのメッカである瑞牆山を左手に眺めながら、道も県道610号となって、塩川に沿ってひたすら甲府盆地に向けて降る。塩川ダムを経て、茅ヶ岳(カヤガタケ)広域農道(おすすめの道です)へ左折すると、日本一日照時間が長いと言われている明野村を通る。このあたりは天気よければ南アルプス、甲府盆地、そして富士山を眺めながら(夜は盆地の夜景を眺めながら)ドライブが出来て言うことなしだ。残念ながら今回は天気には恵まれなかったが、それでもドライブしていて気持ちが良い道である。八ヶ岳から甲府まで、1時間半くらいの道のりだが、山梨⇔長野の行き来に茅ヶ岳広域農道、信州峠ルートは僕の好きな道なので、機会あれば通るようにしている。

信州峠は横尾山の登山口にもなっている。緑の中で気持ちよさそうなさきもりちゃん。

瑞牆山が見えますな。クライマーにとってこの山は憧れでもある。

信州峠(矢印の所)を越えて、県道610号線をひたすら降る。

明野村。天気が良ければ甲府盆地と富士山が見えるのに!残念。

毎回、東京から助っ人の人々が来てくれて感謝感激‼

クロネコヤマトの箱に入れて、本を有効利用してくれる人々の所に送るのだ。しかし、本は減る気配はない。
3日目の昼12時30分、僕は野辺山の駅にいた。別荘の清掃をして、戸締りして、通りがかりのおばあちゃん(別荘の住人)と話していたら、結局昼過ぎてしまったわけだ。今日は、夕方の7時に松本で娘と夕ご飯を食べる約束をしている。さて、それまでの間どうするかという大問題に僕はここ野辺山で直面していたのである。一つは、八千穂高原経由で蓼科に出てビーナスラインのドライブをさきもりちゃんと楽しむというもの。二つ目は、高速で一気に松本に行き、梓川でブラウントラウトを狙うというもの。そうは言っても、ここ何度となくボウズを繰り返していた僕の潜在意識下での思いは決まっていたようで、ドライブなどという悠長なことは言っていられない、ここは起死回生の50㎝級のブラウントラウトを釣り上げ、自慢節さく裂型でブログに載せて、いい気分になるという可能性にかけたのである。さきもりちゃんのエンジンをスタートさせ、国道141号で清里を抜け、中央道長坂インターを目指す。インター入り口では、なんと、ルーフにテントシステムを取り付けたディフェンダー二台、ジムニーシエラ二台とすれ違う。テントに意識が行っていて定かではないのだが、ディフェンダーは二台とも90だったような、なかったような。ルーフ上でテントを展開して、そこでテント生活ということなのか。車中泊というより車上テント泊ということなのだろう!いろいろな楽しみ方があるものだ。しかし、今の僕は釣り場に一刻も早くたどり着かなくてはならない。テント妄想に浸っている暇はないのだ。高速に乗り、松本インター近くの上州屋(釣具店)に到着したのは、昼過ぎの1時30分だった。野辺山から一時間でここまでやってきたことになる。お店では店長から川の様子を聞くと、
「周辺の川は昨日の雨による濁流であまりよくないよ。梓川も下流域は濁りが入っているので、上流の方に行った方がまだ可能性があるのでは」
とのこと。遊漁券を買って、僕とさきもりちゃんは梓川の上流方面の島々谷川出会いを目指した。

朝起きると、ぴよ子とぴよ太がいないので、周辺の森を探してみると、こんなところに巣を作ってくつろいでおるではないか。

日本一高い駅の野辺山で、昼ご飯を食べ、午後の過ごし方を考えた。12時30分、梓川に向けて出発。

島々谷川出会い。左から島々谷川が合流する。右の流れは上高地からやってくる梓川の流れ。どちらも水量は多めだ。

出会いから上流の雑炊橋に向けて釣り上がっていった。ダムの放水のためか、本流の水量は多めだ。
島々谷川出会いの梓川は、日頃源流部の小さな流ればかりが専門の僕からすると、広大で、どこから手を付けて良いか迷ってしまう。源流部では使わない強力な竿で毛バリを遠く投げるが、いつもの毛バリではどこを流れてるか分かったものではない。そこで、ただ目立ちそうだというだけの理由で、マラブマドラーという毛バリを結び付けて投げ込んでみた。確かに良く見える。でも釣れそうな気がしない。だって、人生で一度もこの毛バリで魚を釣ったことがないのだから。それでも、気持ちを保ちながら丁寧に流していくと、いきなり、魚の顔が水面から出てきてガブっと毛バリを飲みこんだ。あまりに、突然のことで僕は無意識に大合わせ!瞬間的にラインが切れて僕の後方にひらひらとフライラインが物悲し気に落下した。
「なんだ、こんな毛ばりも食べに来てくれるのかあ!」
ということで、再びマラブマドラーを結び付けて、以前にもまして集中力アップで丁寧に探索していく。対岸の茂みのぎりぎりを流したときのこと、ぽっかりと浮いて流れていたマラブマドラーがポコッと吸い込まれたのだ。ゆっくりと合わせると、今度は間違いなく重たい魚の手ごたえが伝わってきた。
「やったー、起死回生の一匹が来たぞ!」
と心が湧きたつが、その瞬間、魚は急激に下流に向けて走り出した。足元のラインが急速に引き出されていく(フライフィッシングの場合、リールは糸を保存していくためにしか使わない。釣るときは、必要な分だけリールからフライラインを引き出して足元に垂らしておくのだ。その垂らしておいたラインがどんどん引き出されているということ)。次の瞬間、僕の目に飛び込んできたものは、足元に垂らしたラインの絡まりだ。その絡まった部分が目の前を通り過ぎ、釣り竿のガイドに突入。当然引っかかってしまう。釣り竿がいなされ、ラインと竿が直線的に引っ張られる状態となり、次の瞬間、ラインがプッチンと切れてしまった。何たるチヤ!谷中に響き渡るような大声で
「ウォーッ」
と叫び、しばし呆然と川面を眺め続けたが…。我に返った時には、もう、娘との約束の時間が迫っていた。さきもりちゃんの所に戻り、松本に向けてエンジンをスタートするが、僕の右手には先ほどの魚の躍動感、重量級の重み、下流に向けて走り出したときの速さ、右手越しに走り出すラインの摩擦による熱さ、などが沸き起こり運転も上の空状態だった。よく釣り逃した魚は大きいというが、これは本当に大きかった。またしたも、ボウズになったが、こんな刺激的なボウズならそれはそれでよいかも。イヤーッ、でも、本当は釣り上げたかったなあ!

これがマラブマドラーという毛バリ。人生で一度も使ったことはなかった。
娘とは「しづか」という郷土料理を出してくれる居酒屋で合流し、夕飯を食べた。この居酒屋秘伝のたれに付け込んだ焼き鳥、山賊焼きという信州ならではの鶏のから揚げ(山賊は人からものを取り上げるの”とりあげる”という言葉遊びから付けられた名前だそうだ)、カツオのたたき、馬刺し、などを注文し、大盛りご飯と共にバクバク食べる。そして、大学のことやスイカ農園でのバイト、部活のことなど色々な話を聞くが、その間中、僕の右手は先ほどの魚とのやり取りの感覚に浸っていた。娘と別れた後、名古屋まではいつものごとく中山道(国道19号線)で帰ってきたのだが、その間中、僕の右手は運転に集中することなく、魚の余韻をまさぐっていたのだった。

外見もいい感じだ。昭和初期に建てられたものらしい。

中は明るい感じ。外国の人も多かった。厨房にいるおばあちゃんの雰囲気が最高だった。

奥も深い。こちらは大正期の建物らしい。

カツオのたたき。たまりませんなあ。

牛タンの刺身!ショウガとニンニクと醤油で食べると最高ね。

野菜もたっぷり食べなくてはね。色とりどりの盛り付けで、美しい。

しづか名物の焼き鳥。甘辛いたれに絡まれて、最高の風味。

信州松本、塩尻の郷土料理、山賊焼きですな。鶏むね肉のから揚げですな。ご飯にメッチャ合いますぞ。
コメント