Defender購入への道程(ピヨピヨ日記2:出会い)

Defender購入日記

 僕は何故ディフェンダーにそんなにも憧れているのか?それはある人物が原因しているのだ。その人物とはフライフィッシングのプロショップワチェットのオーナー鈴木寿さんである。彼の美しいキャスティング技術(フライフィッシングでは軽い毛バリをウェイトのあるラインを操って遠くのポイントまで投げなくてはいけない。その投げる行為をキャスティングというのだが、これがとても難しいのだ)にほれ込んでしまい、弟子入りし指導を受けていたのだ。

 瀬戸内海でのんびりキャスティング。フライフィッシングの場合、長いラインを操るので、それをポイントに飛ばすためには、まず後方に一直線にラインを伸ばさないといけない。つまり、前方に投げる前に後方に投げるのだ(バックキャストと言う)。
Fly Fishing Shop Watchett
愛してやまない美しく豊かな自然の中で、今日も楽しくフライフィッシング。

 鈴木寿さんとは1997年ごろ出会ったと思うのだが、当時僕はインタークーラーターボ2800㏄のパジェロ、寿さんは2500㏄のパジェロで同じ車種同士ではあるが、僕の方が300㏄だけエンジンが大きいぞ的マウントが当時の僕の面目をかろうじて保ってくれていた。1999~2000年の頃だったか、いつものように寿さんのお店にキャスティング談義をしに行ったのだが何か様子がいつもと違う。店の前に止まっている車はパジェロでなはい。天井は白色、車体はバケツの青色(俗にはバケツブルーというらしいが、現在ではタスマンブルーである)、ホワイトペイントのスチールホイールを履いたその車は、レトロ感が漂い、見ようによっては初代パジェロのような雰囲気にも見えなくもないが、しかし、どこか言いようのない気品を蓄えていた。店に入ると、寿さんは僕を見るなりニコニコ微笑みかけ、しかし、どこかいたずらっ子のような、マウントを取ったような目で僕を見下ろしていた。下から目線で僕は「外の車は寿さんの…?」「そう、ランドローバーのディフェンダー」「キャメルトロフィーとかに出ているヤツ?」「そう」…あまりのカッコよさ、パジェロ以外にこんなに感性をくすぐられる車があったのか!言葉が続かずその場にへたへたと倒れこみそうになりながら再びディフェンダーの方に視線を向けた。

 詳しく聴いてみると、値段は650万くらいするのに、エアコン、オーディオ、パワステ、サイドステップ…などのぜいたく品は一切ついていない。標準ではハンドル、エンジン、シャーシ、タイヤが付いているくらいらしい。日本車並みの装備にしようものなら軽く1000万を越える。アッ、それとシャーシからの雨漏りとクラッチが定期的にクシャけることは標準装備ということだ。雨の日などはサンダルで運転しないとくつがびしょ濡れになってしまうらしいし、冬場はヒーターをつけても隙間風で寒い。このような車を50年間近く売り続けるランドローバーという会社に一種の感動を覚えたし、このような車と生活を共にできるオーナーはどれだけ気長で大人なのだ?再び寿さんに視線を向けたとき、彼の背後に後光が差しているように見えたのは僕だけだろうか。よく、旧型ディフェンダーのブログを読んでいると、彼らが定期的に使う用語の中に「ドナドナ」というのがある。

ある晴れた昼さがり
市場(修理工場)へ続く道
荷馬車(車両運搬車)がゴトゴト
子牛(ディフェンダー)を乗せてゆく

何も知らない子牛(オーナー)にさえ
売られてゆくのが(治るかどうかが)
わかるのだろうか(わからないだろう)

ドナ ドナ ドーナ ドーナ
悲しみをたたえ
ドナ ドナ ドーナ ドーナ
はかない命

 上記のドナドナの歌詞を( )内に置き換えれば意味が分かるだろう。つまり、彼らはディフェンダーが動かなくなって修理工場に運ばれていくこと、および、その時の切なさを「ドナドナ」と表現しているのである。以降、ディフェンダーとすれ違うたびに、その車とそれを操るオーナーに一種の畏敬の念を抱くようにないり、いつしか自分も所有してみたいという欲望が心の奥底に熱いマグマを煮えたぎらせていった。

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