Defender購入への道程(ピヨピヨ日記18:追跡)

Defender購入日記

 僕のディフェンダー90はトントン拍子に製造が進んで(電子部品を極力排除したことが功を奏したか)7月の初めに完成し、後は船に乗るのを待つだけだったが…! ここで物流の混乱が立ちはだかり、ヨーロッパから日本へ車を運ぶ船(自動車運搬船、Vehicles Carrier)が全く出港しなくなってしまったのだ。 ネットでも話題になっていて、日本への運搬船は月に2回あるようなのだが、7月、8月と全く出船していない。 ランドローバーなどの輸入車の運搬を主に受け持っているのは韓国の船会社EUKORの船たちである。 そのスケジュールをチェックすることは容易で、確かにこの二か月間、ヨーロッパと日本の間の船は出ていないようだ。 こうなったら、船の運航状況のチェック体制を強化して(僕が強化したところで、物流に変化が生じえるわけでもないが…)、日々船の位置確認を日課に組み入れることにした。

EUKORのスケジュール→こちら

 このスケジュールの所のDepartureにはSouthampton,U.K.を、ArrivalにはToyohashi,Japanを選択してみるとここ二カ月ぐらいの運搬船の航行状況が表示される。 厳密にはスロバキアのニトラ工場で生産されたディフェンダーはベルギーのZeebrugg or Antwerp(この二つの港は2021年2月に合併した)、オランダのRotterdam、クロアチアのKoperのどれかで積み込まれるようだけど、僕の短い観測期間においての航路は、 すべてベルギーで積み込まれてイギリスのサウザンプトンに立ち寄るパターンだった。 これで、おおまかなスケジュールはわかるのだけれど、ディフェンダーを乗せた船といつも共にありたいと思うほどに病状が悪化した僕は、以下の船の位置情報アプリを使って暇さえあればEUKORの船たちの位置をチェックした。

Shipinfo.net→こちら

 これはタイムラグがほとんどなく船の位置が更新されるので、仕事が休みの時とかはしょっちゅうチェックしてしまい、「アッ!1ミリ進んだ」とかやれるのでお勧め!

MarineTraffic→こちら

 こちらは、船の位置が船のサイズとともに表示されるので、船が港について、タグボートで押されているとか、停泊した船にタグボートが近づいてきて引っ張り出したからそろそろ出航だ的なことが分かり面白い。 僕はShipinfoとMarineTを組み合わせて船をいろいろと追跡し十分ワクワクしたが、もっといいものがあるかもしれない。

 このように常時観測体制を整えていた時、一隻の自動車運搬船がベルギーのアントワープ港を出港し、イギリスサウザンプトン港を経て地中海を航行していた。 船名はArabian Sea、日本の豊橋に向かっていて、10月3日に着船予定。 二か月ぶりにヨーロッパから豊橋に向かう船、もしや? ということでこの船を常時観測することにした。 すると、M田さんから、

「防人さんのディフェンダー90が船便で出港しまして10月上旬に日本着船予定でございます」

とメールが入る。間違いない!M田さんにArabian Seaという船ではないですかとメールすると

「おそらくその船便ではないかと思います。トラブル回避のため、メーカーからディーラーには詳細が教えてもらえないのですが、最近は船便が少ないのでバレバレですね」

と返信があり、こちらもArabian Sea一隻に意識を集中できるようになった。彼女(Arabian Sea)は地中海、スエズ運河、紅海、アラビア海、スリランカをかすめてベンガル湾沖、そして、9月22日にはマラッカ海峡に到達した。

9月22日にマラッカ海峡に到達。近くにあるペナンは沢木幸太郎が深夜特急で「今僕はマレーシアのペナンという町にいます。泊っているのは不思議に陽気な娼婦の館です」と書き送ったところだ。
彼女(Arabian Sea)はマラッカ海峡に沿って航行する。ペナン、クアラルンプール、シンガポールと1日くらいかかったかな。シンガポール沖でかなりスピードを落として、ノロノロ航行となる。
台風がやってきた。画面右のフィリピンからやってきそうだ。彼女はスピードを上げた。台風が来る前に東シナ海を抜けるつもりなのか!香港の黄埔港を目指す。

 彼女を追跡している間、周辺の地図を眺めながら色々な地名を確認して頭の中で自分をバックパッカーに見立てて世界放浪の旅をしていたが、イスタンブール、アンカラ、イスファハン、テヘラン、ラワルピンディ、アムリトサル、… などの地名が目に付いた。 これらは、”深夜特急”というバックパッカーにとってのバイブル的な本で、著者の沢木幸太郎が旅したところである。 そのようなわけで「そうだ、”深夜特急”を読み直してみよう」と思い立ったのである。 著者は乗り合いバスでデリーからロンドンまで陸路で行くという酔狂としか言いようのない旅を思い付き、その道中を記録したのがこの本である。 今回は船の航行状況に合わせて5巻から読み直してみた。 更に、大沢たかおが主演として名古屋テレビ開局35周年記念番組として企画されたテレビ版”劇的紀行、深夜特急”三部策を見直したりもした。 また、運搬船の仕事とはどのようなものか調べていると、自動車運搬船の日常を記録した航海士のブログや船で働くシェフのブログを発見し、それらを熟読。 もうやることがネズミ算的に増大し日々大忙しとなった。 もはや、仕事どころではない。 そして、これらの総合的報告が定期的にM田さんにメールとして送信された。 M田さんは中さんに「防人さんから、こんなに長文の論文のようなメールが届くんですよ(何とかしてください)」(カッコのなかは、僕の想像だ)漏らしていたそうだ(そんな僕のメールに逐次返信をしてくれたM田さんにはほんと頭が下がります)。

 ここは五井山手前の宮路山山頂。ここからの三河湾、豊橋港、渥美半島の眺めも最高だ。
 この案内板と同じになるように、上記の写真を撮影したのだ。晴れた日は最高だ。

 このような感じでいつも彼女(Arabian Sea)と共にいると、最初は納車までの時間つぶし的行為だったものが、いつしか自動車運搬船自体に興味が湧きだして、彼女が豊橋に入港した際には是非と会いに行きたいという恋にも近い思いを感じるようなったのだ。 しかし、入港予定日の10月3日は仕事だし、その前日は山梨のオヤジ殿の所にいるので何ともならないか。 ちなみに、豊橋港に入港する自動車運搬船を山の上から見る場合は、是非とも、

五井山頂上→ここ参照

がおススメ!山の上でコーヒーでも沸かして、それを飲みながら我が自動車運搬船を眺めるなんて、最高のお出迎え方ではないか!しかし、今回僕は出迎えることは不可能だった。10月3日早朝、僕のパソコンの画面はArabian Seaが豊橋港に入港したことを示していた。そして、彼女の中には我のディフェンダーが積み込まれているのだ。ふと、次なる目的地に目をやると、そこには・・・・、

”名古屋”

と表示されていた。

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