Defender購入への道程(ピヨピヨ日記11:攻防)

Defender購入日記

パジェロGR 5MTを買ってしまった。家のお金200万円使ってしまった(といっても二台目パジェロが17万5千円で売れたので、現実は182万5千円だが)。奥さんはディフェンダーの購入はもうないと思っている。今回の僕の選択は正しかったのか。ディフェンダーの可能性を自ら遠ざけてしまったのではないか。じゃあ他にどのような方法があったというのか!前のパジェロを(修理費70万)+(クーラー修理費10万)+(タイヤ費用10万)+(車検費用20万円)=110万円を支払って乗り続けた方がディフェンダーへの道のりは近かったのか。そもそも、僕のディフェンダーへの道のりは有限なのか?もしかして、無限大の道のりでどのようにあがこうが所詮は夢でしかないのか。パジェロGRを買って半年も経つ頃にはこのような思いに漠然と支配されるようになっていた。要は、「僕ちゃん、今回はパジェロじゃあなくて、ディフェンダーが欲しかったんだもん」と大泣きしたいというのが正直な気持ちだった。このようにピヨピヨとなっていた僕の所に救世主がドイツから帰ってきた。

会社の都合で急遽帰国となった中さんの動きは速かった。ジャガー・ランドローバー京都を下見し、自分の欲する黒色のレンジローバースポーツがあることを確認、入店し営業の人と打ち合わせ(この人が僕の担当でもある営業のM田氏である)。後日、散歩を装ってお嫁ちゃんを誘い出し、あたかも偶然にランドローバーのディラーの前を通ったかのように振る舞い、

「アッ、ランドローバーのディーラーだ。ちょっと寄っていかない!」とスタスタと入店。

「えッ…」と言葉を失って、しかし、中さんにくっついてよくわからず入店するお嫁ちゃん。

「いらっしゃいませ。どうぞ奥様も冷たいお飲み物でも…」と営業スマイルで迎えるM田氏。

気が付くと中さんとM田氏の間で話がトントン拍子に進み、お店を出るときには契約が終わり、納車日も決定していたという速攻攻撃だった。ウーム!芸術的な電撃作戦だ‼

中さんのレンジローバースポーツ(左)と僕の三台目のパジェロGR(右)。石徹白川でイワナ釣りを楽しんだ。こうやって見ると黒もかっこいいよね。

彼の作戦行動はレンジを買ってそれでおしまいという野暮なものではなかった。我が家の奥さんにも攻勢を強めてきたのである。

「あのさぁー、カローラだってなんやかんやで300万円強するわけよ。防人がカローラが好きだったら別にそれでいいわけだけど、現実に防人はディフェンダーが欲しいわけじゃん。それを無視してカローラにしたら大事に乗らないよね。そんな状況に300万もつぎ込むわけ?」

同じセリフを僕が言ったら奥さんの目が吊り上がって大変な家庭内争議に発展するはずなのだが、話術巧みな中さんがこのセリフを言うと、うちの奥さんの目は垂れ下がり、まんざらでもないような雰囲気で聞いている。

「でも、我が家はパジェロを中古で買っちゃたしね」

「イヤー、下取り価格今なら高く出るでしょ!そんなに無駄になっていないと思うよ」

そうなのである。2021年は、米中で始まった半導体貿易抗争とその後のコロナパンデミックに伴う世界的半導体不足が顕在化、新車の納入がストップし、それに伴って中古車市場に客が流れ、中古車価格が上昇し始めていたのである。そして、2022年の新春、ロシアがウクライナへ侵攻。それによる世界的な物流の混乱が自動車業界にさらなる追い打ちをかけていた。ランドローバー社はDiscoveryとDefenderを年間15万台生産できる能力を有するスロバキア・ニトラ(Nitra)工場を新たに稼働し、2800人の雇用を創出してNew Defenderのオーダーに対応する準備を進めていた。それが未曽有の危機に直面し、ランドローバー全体として15%くらいしか車を生産できない状況に追い込まれた。車のオーダーは日々溜まっていくのにもかかわらず、車の生産が追い付かない状況が続き、納車待ちが1年~2年となっていた。まあ、これはまだましな方で、トヨタが発売したランドクルーザーは納車4年待ち、最終的にはオーダーストップせざるおえなくなった。そして、販売価格700万円台のランドクルーザーが中古車市場では1400万円と2倍の価格に上昇するという異常な逆転現象が発生。このように自動車業界、いや、世界の産業界に吹き荒れた逆風が、我が防人家にとっては追い風となる可能性があった。パジェロが高く売却できるかもしれないという可能性が。

僕も攻勢に出た。まず、パジェロのオイル交換の時、オイルの減りが早いかもしれないと整備工場のS氏が言いだした。「もしかしたら、オイル食いをしている可能性がある」というS氏の言葉を最大限に奥さんの前で訴えた。「オイル食いをするエンジンの場合、悪くなる一方なので買い替えのチャンスがあるなら積極的に考えた方が良いということを整備のS氏が言っていたよ」といった具合である(ここだけの話だが、その後のオイル交換でそれほどオイル食いをしているわけではないとわかったのだが、この情報は奥さんには隠しておいた。ここ読まれるとまずいなあー)。

次に、息子のトクチンと娘を味方に引き入れる工作を開始。ディフェンダーの写真を見せたり、町でディフェンダーを見かけると、彼らに「どうだカッコいいだろう」と語りかけ、彼らをディフェンダーファンにすることに成功。すると、家の中でも彼らがディフェンダーという単語を口にする機会も増えてくる。

「なあ、トクチン、サッカー部のポジションはどこなんだ?」

「ディフェンダーだよ」

「オッそうか、ディフェンダーか。なあ、うちの息子はディフェンダーが好きみたいだぞ」

と奥さんに語り掛ける僕。このような時、必ず僕が守っていたことは、僕から”ディフェンダー”という単語を言い出さないということである。必ず、誰かの話を受けて仕方なく受動的に”ディフェンダー”という単語を、ただし最大限繰り返して用いるようにしていたのである。そうこうするうちに、奥さんの方から

「今日、ヴォイシーで私がいつも聞いている人が、ディフェンダーのことを熱く語っていたよ」

なんていう会話がぽつりぽつりと出だすようになってきた。2021年冬、防人家冬の陣が終了し、”ディフェンダー”という単語が禁忌ではなくなり、奥さんの外堀が埋まり出したのである。

年が明けて、2022年の春、息子が二条城を見たいと言い出した(言い出すように誘導した)。

「じゃあ、京都に行って中さん達とも合流するか」

ということになり、早速連絡すると、

「ついでだからNew Defenderの試乗もしてみるか!ディラーのM田氏に連絡しておくよ」

ということなった。僕は奥さんに

「京都の二条城に午前中行って歴史の勉強をして、昼に中さんと合流して昼飯を食べて、その後は哲学の道とかを散策しよう。桜もきれいだよ」

「いいわね」

「それと、中さんが(”僕が”と言わないところがミソ)、New Defenderの試乗をしてみないかというので、仕方ないので(全然仕方なくないのだが)チョビットだけ中さんのディーラーに寄って…」

と語りかけた。これが家の近くのディーラーだと奥さんの警戒心も強かっただろうが、京都という観光地で、名古屋から距離があり、中さんのディーラーということで奥さんの警戒心はかなり低かったと思われる。防人家の家族全員で京都の二条城へ日帰り旅行!イやっ、ジャガー・ランドローバー京都へいざ出陣‼D-dayは2022年4月3日と決定。僕の誕生日の次の日だった。

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