Cucina Lagrange パン屋さん(愛知県名古屋市桜山:Boulangerie Bre-Vant〈ブレ・ヴァン〉)

Cucina Lagrange

 職場でお腹が空いた時のおやつとして、色々なパン屋さんの菓子パンを食するとこが防人の楽しみの一つである。名古屋には色々なパン屋さんがあるが、その中で20年以上前からお世話になっているのが、昭和区桜山(正しくは陶生町)のBoulangerie Bre-Vant(ブレ・ヴァン)である。おかずパンや菓子パンなど色々なものを食べてきたが、どれも美味しい。しかし、その中で特に防人が気に入っているのが「チョコチップクローバー」である。表面にはチョコチップがまぶしてあるが、このパンの神髄はその内部にあるチョコである。内部ではチョコチップ達が一体化し、もはやチョコチップでなく一つのチョコの塊と化していて、その存在感は濃厚である。このパンは三つ葉のクローバーを意識したものだと思われ、三等分できるようになっている。毎日、三分の一ずつを食べていくと、三日間楽しめる。まあ、初日が一番おいしいのであるが、二日目もまず大丈夫だ。三日目になると味が落ちるので、そのような場合は家に持って帰って、冷蔵庫に入れてしまうのである。そして、翌朝、オーブンで3分ほど温めると、表面はカリッとなり、内部のチョコレートはヒヤッと冷たく、この寒暖の差がたまらなくおいしいのだ。つまり、このパンは三日間それぞれの味を楽しめるという意味でもお値打ちなパンなのだ。

 10年前はもう少し北側の狭い店舗にあったが、こちらの場所にやって来て、駐車場や店舗は広くなり、買いやすくなった。
 出来立てのチョコチップクローバーだ。代車ディフェンダー君の中に、香ばしい香りが充満し、お腹が空いてしまう。

 お店の人たちも防人がこのパンにぞっこんであることを皆知っている。防人が入店すると、店員さんたちの目が防人に注がれ(自意識過剰だぞ!防人ッ‼)、もし売り切れていようものなら、憐みの視線が注がれることになるのである。以前に二回ほど売り切れ状態が続いたことがあったのだが、三回目にやっと買うことが出来た時、レジに行くと店員さん(防人が通い始めた20年以上前から務めているベテランの方)が満面の笑みをたたえて迎えてくれて、

「二回連続で売り切れでしたからね。今日はあってよかったですよね」

と言われ防人がチョコチップクローバーにありつけたかどうかチェックされていることが判明したのだった。防人が入店し、チョコチップクローバーが奥の棚に鎮座しているときは、店全体に安どの雰囲気が漂い、明るく、店員さん達の顔は笑顔で満たされる。一方、売り切れの時は店の雰囲気は重たく、暗く、店員さんたちは御通夜のように暗い感じとなる。このようにチョコチップクローバーの存在と防人との相互作用が店全体におおきな影響を及ぼしているのだ。イヤッ…、待てよ、…もしかしたら、店の雰囲気は変化していないのだけど、防人の内面の明暗が防人を通して店全体の明暗を感じさせているだけ?店の外的変化ではなく、防人の内的変化だけか?自意識過剰か?

 今日はチョコチップクローバーを絶対食べたいと思ったので、安全策を取って電話を入れて予約しようと思ったのだ。電話口の女性は

「チョコチップクローバーですね。アッ、もう売り切れですね」

「エ”ッーーーッ」と断末魔の叫び声をあげる防人。

「防人さんが取りに来るのは午後1時でしたよね。だったら、今から焼けるかな。大丈夫です。用意しておきます」

と天使のような声で、信じられない返答が。

「防人のためにわざわざ焼いていただけるのですねッ?ありがとうございます」

「イヤッ、そうい訳ではないですが、早い段階で売り切れになったパンは…」

「ありがとうございます。1時に槍が降ろうと、何が起ころうと伺いますです」

と電話を切った防人は、職場に持って行くリュック中に日頃アウトドアで使うコーヒーセット(ミルとかドリッパーとか)を入れて、準備万端で家を出発するのだった。焼き立てのチョコチップクローバーを濃く入れたコーヒーで頂こうという計画が瞬時に頭の中で構築されたからだ。

 お店に入ると、店員さんたちはみな満面の笑みで出迎えてくれて、

「防人さんのパン、今丁度上がりましたよッ」

とのこと。焼き立てのパンなのでビニール袋には入れず、紙袋の上は開いた状態で渡された。代車ディフェンダー君もパンの香りで満たされたし、到着した職場も同様だ。早速コーヒー豆を挽いて、ドリップ開始していると、女帝殿がやって来て、

「防人さんッ!ここはCafeではないのですよ。職場なのであって、ピクニックでも釣り場でもないのですからね」

とチクチク言われたが、

「女帝殿も食べますか?美味しいッすよ」

「私は要りません。仕事が忙しいですから」

「アッ、それでは遠慮なく頂きます」

てな感じで、無事?チョコチップクローバーは防人の口の中に。焼き立てだと、フカフカでトロトロで、いつもの三分の一の量をあっという間に食してしまいそうだ。丸々一個行ってしまいたい気分でもあるが、ここはぐっと堪えて、明日以降の楽しみもとっておかなくてはね。

 職場の防人デスクはディフェンダーのカレンダー、ぬいぐるみや釣の写真などに囲まれて、公私混同状態だ。そこに、焼き立てのチョコチップクローバーが鎮座し、職場全体に香ばしい匂いが漂う。
 割ってみよう。フカフカで緊張する。入れたばかりのコーヒーとで頂きますよ。
 更に中を覗いてみよう。とろとろのチョコチップが一体化して溶け出してきそうだ。

 今日は防人にとって最高の一日であった。しばらくの間、チョコチップクローバーのこんがりとした香りとコーヒーの香りのマリアージュが職場に存在し続けたのは言うまでもない。

コメント

  1. ayu より:

    これは美味しそうなパンですね。

    少し離れますが、パンのトラ八事店の「生チョコ食パン」が、焼き上がりに合わせて行列が出来るほど人気だそうで、ファストパスまであるそうです。

    • さきもり さきもり より:

      パンのトラ八事店の「生チョコ食パン」は少し前(三~四年前だったかなあ)、よく買いに行っていました。ある時から売らなくなったので、なくなったのかなあと思っていましたが、人気で売り切れ状態になっていたのですかね。それともパンの内容をリニューアルしてそこから人気になったのかなあ?また、買いに行きたいけど、行列ですか。悩ましいですね。

  2. ayu より:

    情報が古かったかもしれませんね。
    「パンを買うのにファストパス⁉」と驚いた記憶があるので、それで頭に残っていたかもしれません。

    • さきもり さきもり より:

      パンを買うのも、USJもファストパスの時代ということですかね。ブレ・ヴァンのチョコチップクローバーもファストパス化したらどうしよう!

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