一週間前、甲賀油日の和田城に行った。この時、油日岳の存在を知り今週は是非登りたいと思い再びやってきたのだ。この一週間は気温も上がったので雪も融けて登山道も大丈夫だろうと甘い判断の上で,余野起点としての倉部岳・三国岳・忍者岳・加茂岳・油日岳縦走を決行したのである。
甲賀和田城のお話はこちら→甲賀和田城



奥余野森林公園駐車場にさきもりちゃん(我が家のDefender90)を置いて息子(”トクチン”と呼ばれている)と歩き始める。出だしは順調だったが、途中から雪が出てくる。「まあ、谷筋だし、日も当たらないから雪が残っているのだろう。稜線は日も当たるし大丈夫」と楽観的に判断し登り続ける。



稜線に出るとそれほど雪もなく、まあ、予想通りかと思う。しばらく行くと鈴鹿、亀山、四日市方面の景色が良いところに出る。海も見えて心地よいので昼飯&Cafe Lagrangeを開店することにする。


お腹もいっぱいになり、コーヒーもおいしかったので、お店を閉店して出発!痩せ尾根を歩きだしてしばらくすると雪が出てくる。しかし、登りなのでそれほど気にならずガンガン登る。






三国岳を過ぎたころから、稜線やせ細り、雪の痩せ尾根の降下にトクチン(我が息子)恐怖を覚えるようになり、スピードが大幅に遅れ始める。「しまった!登りと下りは同値ではなかった!アイゼンも持ってこなかったし、はっきり言って甘すぎる判断だったか⁉」と心で叫ぶ。登山やクライミングをやったことがある人は経験あると思うが、同じ場所でも登りは難なく登れても、下りでは何ともならなくなって立ち往生してしまうことがある。昔、黒部上之廊下などの沢登をやっていたころは、突破困難な廊下帯が現れると、高巻き(側面の崖を登り,困難箇所を過ぎたあたりから再び谷に降りること。つまり、迂回ですな)を実行するのであるが、その時は必ず20mくらいのザイル、ハーネスは携帯していた。登ることは人間得意なのだが、降下することになると途端にダメになる。そんな時にザイルがあると懸垂下降(アプザイレンということも多い)という技術を使って、垂直の壁でホールドなどなくても、とても楽ちんに降りられるのだ。どんな場合でも降りれるという安心感が登る勇気を醸し出してくれるのだった。


丈夫な木の枝をピッケル代わりに、ひたすらトクチン(我が息子)が降りやすいようにステップを切る。「左手でその木をつかんで、右手はその根っこを持って…。腰が引けると滑りやすくなるから、なるべく前傾姿勢で!」と口を動かしながら、ステップを切るために手も激しく動かしになりながらゆっくり降下する。水平な稜線歩きになっても痩せ尾根に雪が付いてるので気が抜けない。雪が降ってから人間は歩いていないようで、一匹の鹿の足跡だけが付いている。我々に方向を指し示すように、孤独に、自慢げに、永遠と。忍者岳を過ぎたころから、人の足跡が混じるようになるが、明らかにアイゼンを装着した足跡だ。この人、忍者岳あたりで来た道を引き返したのだろう。行と帰りの両方の痕跡がみられる。加茂岳を過ぎ、油日岳に向けての登りは楽に登り切り、やっと油日山頂に。



油日山頂から奥余野森林公園駐車場への下りは、雪はあるがそれほどのことはなく、トクチンも感覚をつかんできたのか、鼻歌交じりとなる。三馬渓谷を何度か渡りながら高度を下げ、最後は林道へ。少し下ると、さきもりちゃんが待つ駐車場に到着だ。


その後は名阪国道を亀山に。目的は亀山城近くのパティスリーシャトーのアンパンである。先週やその前に来たときは完売だったので、今度こそはということで、行きの道中に電話で「山で遭難しなかったら午後4時前後に取りに行きます」と予約を入れておいたのだ。入店するとマスターが微笑みながら「無事下山されたのですね」と話しかけてきてくれたので、「イヤー、雪山になっていて、装備を怠っていたので遭難一歩手前でした」なんていう今となっては笑い話になってくれた話をしばらくして、暖かい気持ちになって名古屋へ向けて出発することができた。日曜の黄昏時(午後五時)、ニッサン安部礼司(アベレージ)のラジオドラマを聴きながらの下道ドライブは僕にとって至福の時なのである。さあ、満喫だ。


コメント