Cafe Lagrange (雨読編20:オイラー・マクローリンの和公式、ベルヌーイ数、ベルヌーイの多項式事始め)

Cafe Lagrange 雨読編

 「1、2、3と順に足していって100まで足すといくつになるでしょう?」

 1784年、ドイツのブラウンシュヴァイクという町のとある小学校の二年生の授業で、校長のビュットネル先生が黒板に書き付けた問題だった。この問題を生徒達が苦戦しながら解いている間に、急用を済ませようとしたわけだ。そして、教室を出ようとした丁度その時、背後から

「Ligget se!(校長ッ、できたでェーッ!)」

という元気の良い声が響き渡った。半信半疑で生徒の所に戻り彼のノートを見ると、そこには「5050」と正解が記されているではないか。校長は目を白黒させながら、再び少年の顔に視線を落としたのだった。この少年こそ、数学の帝王と呼ばれるようになるヨハン・カール・フリードリッヒ・ガウスその人なのだ。一体全体、ガウス少年はこの問題をどのように解いたのだろうか。もう一度、問題を書くと、

\[S_1 (100)=1+2+3+\cdots+99+100 = ? \]

である。まず、もう少し小さな数で準備体操をしてみよう。\(\displaystyle S_1 (5)\)を計算する。つまり、

\[S_1 (5)=1+2+3+4+5\]

なのであるが、この和を以下のように逆に書き直してみる。

\[S_1 (5)=5+4+3+2+1 \]

そして、これらを各項ごとに足してみると、

\[2S_1 (5)=6+6+6+6+6=5\times6 \qquad S_1 (5)=\frac{1}{2} \times 5 \times 6\]

と計算できるわけである。それでは、\(\displaystyle S_1 (100)\)も同様にやってみよう。

  \(\displaystyle S_1 (100)=1+2+3+\cdots+99+100 \)

  \(\displaystyle S_1 (100)=100+99+98+\cdots+2+1 \)

これらを足すと

  \(\displaystyle 2S_1 (100)=101+101+101+\cdots+101+101=100 \times 101 \)

よって、\(\displaystyle S_1 (100)=\frac{1}{2}\times100\times101=5050 \)となるわけだ。ガウス少年恐るべし(小学生の時の防人は絶対こんな事思いつかない。順々に足していき、途中で嫌になって投げ出すこと必至である)。さて、ここまでくれば\(\displaystyle n \)項までの和

  \(\displaystyle S_1 (n)=\sum_{k=1}^{n}k=1+2+3+\cdots+(n-2)+(n-1)+n\)

の公式を得るのはここまでくれば容易い。

  \(\displaystyle 2S_1 (n)=(n+1)+(n+1)+\cdots+(n+1) \)

ここで\(\displaystyle (n+1) \)が\(\displaystyle n \)項あるので求める和公式は

\[ S_1 (n)=\sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)\]

となる。さて、ここからが本題なのだが、この和公式を拡張して以下のべき乗和、

  \(\displaystyle S_2 (n)=\sum_{k=1}^{n}k^2=1^2+2^2+\cdots+n^2=?\)

  \(\displaystyle S_3 (n)=\sum_{k=1}^{n}k^3=1^3+2^3+\cdots+n^3=?\)

  \(\displaystyle S_4 (n)=\sum_{k=1}^{n}k^4=1^4+2^4+\cdots+n^4=?\)

      \(\displaystyle \vdots \)

  \(\displaystyle S_s (n)=\sum_{k=1}^{n}k^s=1^s+2^s+\cdots+n^s=?\)

の公式(特に最後の公式)を得ることをやってみたいのである。この公式は1712年に日本の和算家 関孝和により、1713年にはベルヌーイ(Jakob Bernoulli)により求められているものである。この導出の過程で彼らは関・ベルヌーイ数というものを発見している。更に、この関・ベルヌーイ数が現れる有名公式としてオイラー・マクローリンの和公式というのがあって、その式からはべき乗和の公式を考え直すことができるだけでなく、もっと一般の関数の整数点での値の和を評価するのに大変有効な公式となるのである。つまり、べき乗和だけでなく、

  \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}\ln k=\ln1+\ln2+\cdots+\ln n\)

なんていう和も評価できてしまうのだ。更にはリーマンのゼーター関数\(\displaystyle \zeta(s) \)についても重要な結果を引き出すことができるのである。まず、この和公式を使うとゼーター関数を全複素平面上への解析接続できてしまう。更に、\(\displaystyle s=1 \)における極の存在とそこでの留数が\(\displaystyle 1 \)であることや、\(\displaystyle 0 \)以下の整数点でのゼーターの値なども求めることができるのである。このように、オイラー・マクローリンの和公式は解析数論への応用上きわめて重要な式となっているのだ。ということで、オイラー・マクローリンの和公式に降臨頂こう。

  \(\displaystyle \sum_{k=a}^{b}f(k)=\int_{a}^{b}f(x)dx+\frac{1}{2}\left( f(a)+f(b) \right) \)

       \(\displaystyle +\sum_{k=1}^{M-1}\frac{B_{k+1}}{(k+1)!}\left( f^{(k)} (b)-f^{(k)} (a) \right)\)

       \(\displaystyle-\frac{(-1)^{M}}{M!}\int_{a}^{b} B_{M}(x-\lfloor x \rfloor)f^{(M)}(x)dx \)

 この式は初めて見るととてもごつい感じで、読み飛ばしてしまいたくなるのであるが、じっくり見てみるとなかなか味のある式なのである。今回はこの公式をざっくりと概観してみよう。

●左辺:\(\displaystyle \sum_{k=a}^{b}f(k) \)について!

 これは数列の和を表している。例えば、\(\displaystyle f(x)=x^2 \)、\(\displaystyle a=1、b=n \)の時は、\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}f(k)=\sum_{k=1}^{n} k^2 \)なるべき乗和を表すのである。また、\(\displaystyle \sum_{k=a}^{b}f(k)=\sum_{k=a}^{b} f(k)\times 1 \)と考えると、これは関数\(\displaystyle f(x) \)を\(a\)から\(b\)まで横幅\(1\)で大雑把に近似した時のグラフの面積、棒グラフの面積を表していると解釈もできる。

●右辺第1項:\(\displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx \)について!

 これは関数\(f(x)\)の\(a\)から\(b\)までの面積を表している。そのため、この項を左辺に移行してみると、

  \[ \sum_{a}^{b}f(k)-\int_{a}^{b}f(x)dx \]

となり、関数\(f(x)\)を、棒グラフでざっくり近似した面積から真の面積を差っ引いたときのズレを、上記公式右辺第2、3、4項で評価できることを表している。そうなってくると思い出してくる定数がありますなぁー!ここで、\(\displaystyle f(x)=x^{-1} \)、\(a=1\)、\(b=n\)としてみると、

  \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}f(k)=f(1)+f(2)+\cdots+f(n)=1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{n}=S_{-1}(n) \)

であり、

  \(\displaystyle \int_{1}^{n}f(x)dx=\int_{1}^{n}\frac{1}{x}=\ln n-\ln 1=\ln n \)

となるわけであるから、

\[ \sum_{1}^{n}f(k)-\int_{1}^{n}f(x)dx=S_{-1}(n)-\ln n=\left( 1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{n} \right)-\ln n \]

となり、ここで、\(n \to \infty\)としたものがオイラー・マスケローニの定数\(\gamma\)と言われているもので、

\[\gamma=\lim_{n\to \infty}\left( 1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{n}-\ln n \right)=0.57721\cdots\]

であーる。この\(\gamma\)が有理数なのか無理数なのかについては200年来の謎なのであーる。

●右辺第2項:\(\displaystyle \frac{1}{2}\left( f(a)+f(b) \right) \)

 これは\(f(a)\)と\(f(b)\)の算術平均(相加平均)である。

●右辺第3項:\(\displaystyle \sum_{k=1}^{M-1}\frac{B_{k+1}}{(k+1)!}\left( f^{(k)} (b)-f^{(k)} (a) \right) \)

 まず、\(f^{(k)}(x)\)は\(f(x)\)の\(k\)次導関数を表している。お次が、今回の主役級のお一人である関・ベルヌーイ数\(B_{k}\)様である。定義は

\[B_{n}=-\frac{1}{n+1}\sum_{k=0}^{n-1} {}_{n+1} \mathrm{ C }_k B_{k} 、 B_{0}=1 \]

というものだ。但し、\(\displaystyle {}_{n} \mathrm{ C }_k=\frac{n!}{(n-k)!k!} \)である。 この定義見ただけではピンとこないので、少し手を動かしてみよう。まず、\(n=1\)とすると、\(\displaystyle B_{1}=-\frac{1}{2}{}_{2} \mathrm{ C }_0 B_{0}=-\frac{1}{2} \) を得る。更に、\(n=2、3\)とすると、

  \(\displaystyle B_{2}=-\frac{1}{3}\left({}_{3} \mathrm{ C }_0 B_{0}+{}_{3} \mathrm{ C }_1 B_{1}\right)=-\frac{1}{3}\left(1-\frac{3}{2}\right)=\frac{1}{6}\)

  \(\displaystyle B_{3}=-\frac{1}{4}\left({}_{4} \mathrm{ C }_0 B_{0}+{}_{4} \mathrm{ C }_1 B_{1}+{}_{4} \mathrm{ C }_2 B_{2}\right)=-\frac{1}{4}\left(1-\frac{4}{2}+\frac{6}{6}\right)=0\)

とこんな感じでやっていくと、\(\displaystyle B_{4}=-\frac{1}{30}、B_{5}=0、B_{6}=\frac{1}{42}、B_{7}=0、\cdots \)と逐次求まっていくわけである。このベルヌーイ数についてはクラウゼン・フォンシュタウトの定理というのがあって、これによるとベルヌーイ数は素数と関係があることがわかり不思議さが増す。

●右辺第4項:\(\displaystyle \frac{(-1)^{M}}{M!}\int_{a}^{b} B_{M}(x-\lfloor x \rfloor)f^{(M)}(x)dx \) 

 但し、\(M\)は任意の自然数だ。まず、\(\lfloor x \rfloor\)について説明しなくてはならない。

  \(\lceil x \rceil\)・・・ceiling functionといい、\(x\)以上の最小の整数を表す。

  \(\lfloor x \rfloor\)・・・floor functionといい、\(x\)以下の最大の整数を表す。

  \(x-\lfloor x \rfloor\)・・・\(x\)の小数部分を表している。

 例えば、\(\lfloor \sqrt{5} \rfloor=\lfloor 2.23606\cdots \rfloor=2\)、\(\sqrt{5}-\lfloor \sqrt{5} \rfloor=0.23606\cdots\)、てな感じかな。さて、お次はベルヌーイ多項式\( B_{n}(x)\)の説明だ。ベルヌーイ多項式は

\[B_{n}(x)=\sum_{k=0}^{n} {}_{n} \mathrm{ C }_k B_{n-k}x^k={}_{n} \mathrm{ C }_0 B_{n}+{}_{n} \mathrm{ C }_1 B_{n-1}x+{}_{n} \mathrm{ C }_2 B_{n-2}x^2+\cdots \]

と定義されている。具体的には

  \(\displaystyle B_{0}(x)= {}_{0} \mathrm{ C }_0 B_{0}=1 \)

  \(\displaystyle B_{1}(x)= {}_{1} \mathrm{ C }_0 B_{1}+{}_{1} \mathrm{ C }_1 B_{0}x=x-\frac{1}{2}\)

  \(\displaystyle B_{2}(x)= {}_{2} \mathrm{ C }_0 B_{2}+{}_{2} \mathrm{ C }_1 B_{1}x+{}_{2} \mathrm{ C }_2 B_{0}x^2=x^2-x+\frac{1}{6}\)

  \(\displaystyle B_{3}(x)= {}_{3} \mathrm{ C }_0 B_{3}+{}_{3} \mathrm{ C }_1 B_{2}x+{}_{3} \mathrm{ C }_2 B_{1}x^2+{}_{3} \mathrm{ C }_3 B_{0}x^3=x^3-\frac{3}{2}x^2+\frac{1}{2}x\)

  \(\displaystyle B_{4}(x)= {}_{4} \mathrm{ C }_0 B_{4}+\cdots\qquad=x^4-2x^3+x^2-\frac{1}{30}\)

  \(\displaystyle B_{5}(x)= {}_{5} \mathrm{ C }_0 B_{5}+\cdots\qquad=x^5-\frac{5}{2}x^4+\frac{5}{3}x^3-\frac{1}{6}x\)

      \(\displaystyle \vdots \)

 以上よりオイラー・マクローリンンの公式についての大まかな説明が終わった。ここで、もう少しこの公式についての親近感を増すために、この公式を使ってべき乗和公式を導出してみよう。

◎関数\(f(x)=x^2\)について考える。\(a=1、b=n\)とする。注意としては\(f^{(1)}(x)=2x\)、\(f^{(2)}(x)=2\)、\(f^{(3)}(x)=0\)、これ以降の高階微分はすべてゼロ。そこで、公式の\(M\)は\(M=3\)に設定しておく。このもとで、公式右辺の第4項が消えてなくなる。

●公式の左辺\(\displaystyle =\sum_{k=1}^{n}f(k)=\sum_{k=1}^{n}k^2 \)

●公式の右辺\(\displaystyle =\int_{1}^{n}x^2dx+\frac{1}{2}\left( 1+n^2 \right) +\frac{B_{2}}{2!}\left( 2n-2 \right)+\frac{B_{3}}{3!}\left( 2-2 \right)\)

       \(\displaystyle=\frac{n^3}{3}+\frac{n^2}{2}+\frac{n}{6}=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\)

 以上より、\(\displaystyle S_{2}(n)=\sum_{k=1}^{n}k^2 =\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\) を得る。

◎関数\(f(x)=x^3\)について考える。\(a=1、b=n\)とする。注意としては\(f^{(1)}(x)=3x^2\)、\(f^{(2)}(x)=6x\)、\(f^{(3)}(x)=6\)、\(f^{(4)}(x)=0\)、これ以降の高階微分はすべてゼロ。そこで、公式の\(M\)は\(M=4\)に設定しておく。このもとで、やはり公式右辺の第4項が消えてなくなる。更に、\(B_3=0\)であることにも注意しておこう。

●公式の左辺\(\displaystyle =\sum_{k=1}^{n}f(k)=\sum_{k=1}^{n}k^3 \)

●公式の右辺\(\displaystyle =\int_{1}^{n}x^3dx+\frac{1}{2}\left( 1+n^3 \right) +\frac{B_{2}}{2!}\left( 3n^2-3 \right)+\frac{B_{4}}{4!}\left( 6-6 \right)\)

       \(\displaystyle=\frac{n^4}{4}+\frac{n^3}{2}+\frac{n^2}{4}=\left(\frac{1}{2}n(n+1)\right)^2\)

 以上より、\(\displaystyle S_{3}(n)=\sum_{k=1}^{n}k^3 =\left(\frac{1}{2}n(n+1)\right)^2\) を得る。

 さて、ここまで計算してきて、現在12月31日(大晦日だ。奥さんは紅白に夢中、防人は数学に夢中!)の23時過ぎである。もう少しで年越しだ。防人は未だ年賀状を全く書いていないのである。そろそろ、数学計算遊びから年賀状書きに移らなくてはなるまい。ミス直しをしていないが、まあ、一応2025年内中に掲載しておこうかな。次回はオイラー・マクローリンの公式の証明をまとめておこうと思っている。それでは皆様、良いお年を!

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