若さと風流さ(周囲の風景を楽しんだり、鳥のさえずりを聞いたり、風の音に耳を済ませたり、一杯のコーヒーで一時間ぐらいその場でたたずんだり、…)は負の相関があるようである。
防人が少年時代の時、日本中がスキーブームに沸いていた。防人少年もそのご多分に漏れず、スキーにのめり込んだ。リフトが動き出す前からカニさん歩きでゲレンデを登り、滑ってはまた登るを繰り返していた。リフトが動き出してからは昼飯の時間は最小限、三時のおやつなんかはもっての他、寸暇を惜しんで滑り、リフトに乗り、…を繰り返したものだ。夕飯もほどほどにナイターに行き、リフト終了ぎりぎりに滑り込んで乗せてもらい、最後のスキーヤーとしてゲレンデを滑り泣く泣く宿屋に寝に帰る感じであった。周囲の大人が飯の後、ノンビリビール飲んだり、二~三回滑っただけで休憩して、ケーキセットなんか食べている姿を半ば軽蔑の眼差しで眺めていたのである。当然、周囲の雪山(八方尾根スキー場によく行ったので、北アルプスの雄大な山並みが存在したはずなのだが・・・)なんかまったく目に入らなかった。
その後、大学生の時に再び始めた釣り(フライフィッシング)でも、釣り場での時間、釣りという行為をしている時間をいかに最大化することに意識が集中していて、そこにたどり着くまでのドライブ時間の最小化(制限速度からのかなりの逸脱、それに伴う免停、遅い車は所かまわず追い抜きをかけ、…などなど道交法違反は数知れず!)、昼飯の効率化または削除、兎に角、釣り時間優先で深山幽谷の周囲の大自然を満喫するという体からは程遠い状況で、目を血走らせて、お魚さんを釣ることに全神経を集中させていたのである。そして、帰りのドライブは疲れすぎてピヨピヨ状態で名古屋に帰ってくることもしばしばだった。
その後、釣りに伴う沢登りだけでなく、山登りも始めたが、これがまた風流さとは程遠いものだった。仕事から帰り、夜中の0時をもって家を出発し、次の0時、すなわち24時間以内に槍ヶ岳、穂高連山、笠ヶ岳、…などを登って帰って来られるかを実践していたのである。当然、登山道を脇目もふらずに駆け上がり、ピークを踏んで、頂上滞在もほどほどにすぐに駆け下りて行き、途中の景色をのんびり楽しむということは皆無。ひたすら、往路の運転、血眼登山、そして復路の運転が24時間以内に収まることにエクスタシーを感じていたのである。
その後、育児を経験してみてみると、子供を連れて遠方の公園に行ったり、山城巡りなどのハイキングに出かけたりするようになると、それまでの血眼ドライブ、血眼登山なんかをやるわけにはいかず、というより端からそのような”血眼”モードはなくて、子供のペースに合わて歩みを進めたり、子供を乗せているため如何に安全に運転するかに意識を集中させたり、子供と一緒の食事を楽しんだり、と今までの自分中心ペースのアウトドアーのやり方から子供に歩調を合わすようなやり方に180度の転進を、無意識に行うようになったのである。そのような時を経て、釣りや登山に戻って来た防人であるが、若いころとは全く別なものに価値を置くようになった。まず、ランチを自分でのんびり作るようになったし、ランチ後も一時間ぐらい景色を見ながらノンビリするようになった。道中のドライブも時間をかけていろいろな景色を楽しんだり、面白そうなお店には立ち寄ってみたり、景色の良いところではコーヒーを淹れてさきもりちゃんのルーフキャリアーに腰掛けてポヨヨンとすることも多くなった。もちろん、運転も制限速度(超過してもプラス10kmくらいだ)くらいでのんびり走行するようになった。高速に入っても、80~90㎞くらいでトラックの後ろについてトロトロ走ることがほとんどという、若い時の僕が見たら目が点になるような運転を実践しているのである(だから、燃費はいいよ)。防人も50代になり、体力が衰えた、動体視力が衰えた、気力が衰えた、などと周りの人は思うかもしれないけれど、自分としては若いころと体力は何ら変わらないと思っているし(懸垂だって一日50回はやっているし、ほぼ毎日職場には往復50㎞自転車通勤だ)、気力も充実していると思い込んでいるし、動体視力だって素早いアマゴの動きを見逃さないし(いや、待てよ、最近釣りでバラすことが多いのは動体視力鈍っているからか?)、まだまだ、体力年齢は若いもんには負けはしない(精神年齢はもっと低いかもしれない)。防人も、50代を越えて、風の音、鳥のさえずり、川のせせらぎを感じられる風流な落ち着きのある大人に成長したということなのかもしれない(ただ、釣りに行ってお魚さんが釣れないと焦りまくる状況は昔と変わらないか?あくまで、釣りにおいては”お魚が釣れた”という条件が満たされていた場合の話)。

早朝5時に名古屋を出発したが、滋賀県の竜王に到達するころには通勤ラッシュに巻き込まれてしまった。前方に見える山が、今日縦走することになる鏡山、竜王山などの山達が点在する竜王山系だ。楽しみ楽しみ。

国道8号線沿いの"道の駅 かがみの里"にさきもりちゃんを停めた。この辺りの国道8号線は中山道ー東山道に沿って走っているので、周囲には本陣跡やお寺など歴史ある建物が立ち並んでいる。

(分県登山ガイド 滋賀県の山 山と渓谷社より)
今回は、かがみの里→星ヶ崎城址→涼み岩→鏡山(385m)→竜王山(384m)→雲観寺後→鳴谷池(昼飯)→鳴谷渓谷→三井のアウトレット→善光寺川→かがみの里 という周回ルートを歩いたのだ。"道の駅かがみの里”にこれらの山塊のパンフレットとかがあり参考になる。駐車場脇に登山口があるので迷うことはない。

登山口には任王堂というお寺?がある。その背後には西光寺跡があり、石燈籠などが遺構として存在している。

星ケ城は星ヶ峯の山頂(222.6m)にある山城で、鏡久綱という人によって築かれたらしい。頂上は削平されていて、石垣がしっかり残っているところが驚きである。

写真の石垣は縄張り図の橙色囲いの所にある。次の写真は赤矢印方向に眺めたもの。我々は黄色矢印に従って歩みを進めた。

青矢印は琵琶湖の向こう側(西側)の比良山系、赤矢印が水茎岡山城、緑矢印が長命寺山、橙矢印が近江八幡城や北之庄城がある八幡山だ。麓には国道八号線(東山道)を見下ろせる、交通・軍事上の要衝にこの山城は築かれていることがわかる。

鏡山へ向けてのトレイルの様子。紅葉はまだ少し早い感じがした。

白亜紀後期野洲花崗岩体がこの竜王山系にも点在している。涼み岩もその一つだ。

涼み岩からは野洲方面が見えまくり。青矢印は近江富士として有名な『三上山(432m)』である。その麓には『来来亭』の総本山(本店)がある。ここで、景色を眺めながらノンビリコーヒーでも飲みたかったのだが、娘はそそくさと先に行ってしまった。「オーいッ、待ってくれぇーいッ」。

鏡山山頂に到着。ここからも、野洲方面の景色が見られるので、この辺りで昼飯にでもと思う暇もなく、娘は歩き出してしまった。「お父さんはお腹がすいたんだけど、・・・、おーいッ、お父さんを置いて行かないでくれぇーいッ!」。どんどん三井のアウトレットに向けて突き進む娘であった。

鏡山からすぐのところに竜王山があった。もちろん、ここも素通りしてどんどん行ってしまう娘。

竜王山から少し降下したところにある『雲観(冠)寺(うんかんじ)』跡。写真は"三尊石仏”という仏像らしい。

鳴谷池に向けて降下していくトレイル。シダ植物に覆われて、少し紅葉も始まって、なかなか雰囲気の良い状態だ。

鳴谷池に到着。流石にお腹がすいたので、娘も"昼飯タイム”を取ることに同意。ここで、ランチシェフと化する防人である。

土日は人で賑わうのだろうけど、平日の水曜日は誰もいない。お店を広げ調理開始。途中、トレラン系のおばさまが目の前を颯爽と走り抜けていっただけだ。

ドライカレー風焼き飯に、キーマカレー、クン玉を半分に切り出来上がり。器はタスマンブルー(バケツブルー)のものをIKEAで見つけたのだ。

池から流れ出た鳴谷渓谷に沿ったトレイルを歩く。昼飯後の娘は三井のアウトレットに向けて一目散に走り下り、もはや、防人の視野には存在していない。風流さのかけらもないなぁー。

防人は渓谷に降り立ち、野洲花崗岩帯の河床の上を流れ下る水をしばし眺め、のんびりモードに。今頃、娘は三井のアウトレットに到着しているのだろうか。娘には豊かな自然の景色は全く目に入っていないのだろう!

人工的な世界に入った防人は浮きまくりだった。姿が半袖・半ズボンだったため、周囲のお客さん(長袖・長ズボンに加えて、更にジャケットとかマフラーとかもしていて、とても寒そうだね)と対照的ないで立ち。そこにリュック姿で、いざとなったら熊と戦うための相棒、熊スプレー、ナイフも持ち合わせていたのだから浮いてしまうのも仕方ないか。ランドローバー京都でもSV認定だしな。

てんぷらさんにlineをすると「アウトドアー関係のお店に入れば、防人さんも浮きませんよ」と言われたので、入ってみたのだがやっぱり浮いていた。てんぷらさんが、「半袖だとねぇー。まあ、登山姿であることの問題ではなく季節性の問題(11月に合った服装をしていない)なのかもしれませんねぇー」と返信が来て、納得できた気がした。みんな、服を厚着しすぎてはいないだろうか。

三井のアウトレットに沿って流れている善光寺川を経て、美松台という団地を歩いてると、かわいい看板を発見。「おはよう」という挨拶とは程遠いペンギンさんの雰囲気のミスマッチがたまらない。看板背後の山は、今回歩いてきた鏡山、竜王山だ。

往路は国道421の永源寺経由で来たのだが、復路は野洲川から国道1号(東海道)で甲賀、亀山経由にした。途中、不思議な建築に惹かれて"道の駅 あいの土山”に立ち寄る。最近リニューアルオープンしたらしく、この建物は隈研吾氏のデザインらしい。斬新な建築の前でご満悦のさきもりちゃん。

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