さきもりちゃんと外出ばかりしていて、家で本を読む、数理物理的なことを考える時間が持てないでいる今日この頃の防人です。頭が筋肉化しているのを感じています。昨日、免許の更新に行ってきました。平針の建物は近代化され、更新手続きはよりスムーズになったのですが、数分差で講習がスタートしてしまい、僕は次の講習にまわされました。何と講習開始は一時間後!途中の公園でチンニングをやったりしなければ、このようなことにならなくて済んだのにと後悔しました。そして、今回、ゴールドからブルーの免許に降格。昨年の夏(2022年の夏)、一時停止違反でチケットを切られて20年間のゴールドが途絶えたのです。講習では高齢者の免許更新のことが説明されましたが、後十数年たつと僕も他人ごとではなくなります。今のようにディフェンダーを好き放題乗りまくる体力も、もしかしたら、それよりはるか前に、金銭的な面で維持が困難になったりしているかもしれません(次の車は、今のところジムニーシエラと決めているので、それに乗っているかも!)。そうなったときは、頭の中で、数学世界の旅に出かけられるようにしておかなくてはと思い、もっと、雨読編を充実させて頭の体操をしておこうと思いました。ディフェンダーの世界はお金がかかり、金銭的凡人の僕には大変ですが、数学的世界はお金はかかりませんが(専門書を買ったりしても、ディフェンダーで飛んでいくお金からすると微々たるものですから)、こっちの世界はとても難解で、頭脳的凡人の僕にはこれまた難儀なものです。でも、人生楽なことばかりやっていても、面白くありませんので、ディフェンダー世界も数学世界もやれるだけやっていこうと思います。数学では、コホモロジー、ファイバーバンドル、ジェットバンドル、フィンスラー幾何学、層の理論、圏論などを抵抗感なくしたいのですが、どれも挫折中。ここ数年で達成できたのは、去年ディフェンダーを購入するという物質的な面だけでして(我が家の経済レベルで、娘と息子がいて、娘は今年から信州で大学生なので、仕送りが発生。息子の塾代とか考えると、このような中でのディフェンダー購入はガウス賞レベルと思っているのですがね。奮闘模様はピヨピヨ日記参照してくださいね)、頭脳的な面は何も実りはないですね。これではいかんいかん。知的貧困になってしまう。ということで、久々の雨読編更新です。
物体の運動、すなわち、位置\(x\)の時間\(t\)による変化\(x(t)\)を求めるために、発想を変えて、\[v=\frac{dx}{dt}\]より、\(dt=\frac{1}{v} dx\)と変形して積分 \[t=\int \frac{1}{v} dx\tag{1}\] を実行してみようということだった。しかし、この場合は速度\(v\)を位置\(x\)の関数\(v(x)\)で表現しなくてはいけないので、このようなことを実行する方法として、ヤコブ・ヘルマンやレオンハルト・オイラー等によって運動の第一積分(エネルギー積分)が開発されたのだ。この方法で積分に成功すれば、結果は\(t=t(x)\)の形に求まるので、通常の\(x=x(t)\)の逆関数として決定される。この方法を調和振動子に適用してみようということだった。
調和振動子型の時、運動方程式\[m\frac{dv(t)}{dt}=-kx(t)\]から\(\frac{dv(t)} {dt}=-\frac{k}{m} x(t)\)より\(v(t)\)を求めようとしてもうまくいかない。そこで、この運動方程式の両辺に\(v(t)\)を乗じてみよう。\[m\frac{dv(t)}{dt}v(t)=-kx(t)v(t)\]
\[0=mv(t)\dot{v}(t) +kx(t) \dot{x}(t) =\frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}mv(t)^2+\frac{1}{2}kx(t)^2\right) \]
\[\frac{1}{2}mv(t)^2+\frac{1}{2}kx(t)^2=E(時間によらず一定) \]
なる運動の定数を得る。まあ、これは力学的エネルギーの保存則というものである。そのため、運動方程式の両辺に\(v(t)\)を乗じて、一回積分を実行する行為をエネルギー積分というのだろう。さて、以下では\(v(t)\)を\(v\)、\(x(t)\)を\(x\)と略記する。このもとで、上の式を\(v\)について解くと、
\[v=\pm\sqrt{\frac{2E}{m}-\frac{k}{m}x^2}=\pm\sqrt{\frac{2E}{m}\left(1-\frac{k}{2E}x^2 \right) }\]
となり、\(v\)を\(x\)で表現することが出来た。簡単のためプラス符号の場合を考えることにして(マイナス符号の場合は各自やってみよう)、この\(v\)を(1)式に代入してみよう。但し、積分が\(t=0\)から\(t\)までの時、位置においては\(x_0\)から\(x\)までの積分としておこう。
\[t=\int_0^t dt=\int_{x_0}^x \frac{1}{v} dx=\sqrt{\frac{m}{2E}}\int_{x_0}^x \frac{1}{\sqrt{\left(1-\frac{k}{2E}x^2 \right) }} dx\]
積分をきれいにするために、\(X=\sqrt{\frac{k}{2E}}x\)と置換をする。\(x_0\)から\(x\)の範囲の積分を\(X_0\)から\(X\)までの積分と読み直して、更に、\(dX=\sqrt{\frac{k}{2E}}dx\)となるので、上式の積分は以下のようにきれいになる。但し、\(\omega=\sqrt{\frac{k}{m}}\)と置いた。
\[\omega t=\int_{X_0}^X \frac{1}{\sqrt{1-X^2 }} dX\]
ここまでくると、この積分は高校レベルではおなじみの置換\(X=\sin\theta\)でやり抜くことが可能である。\(X_0\)から\(X\)までの積分は\(\phi\)から\(\theta\)までの積分としておこう。 \(dX=\cos\theta d\theta\)であり、\(\sqrt{1-X^2 }=\sqrt{1-\sin^2\theta}=\cos\theta\)(ここでは簡単のため\(\cos\theta\)は正としておく)なので、結局、
\[\omega t=\int_\phi^\theta d\theta=\theta-\phi \hspace{20pt} \theta=\omega t+\phi\]
以上より、置き換えをたどっていくと、
\[x=\sqrt{\frac{2E}{k}}X=\sqrt{\frac{2E}{k}}\sin\theta=\sqrt{\frac{2E}{k}}\sin\left(\omega t+\phi\right)\]
となり、物体の位置の時間変化が求まったことになる。但し、\(E\)は
\[E=\frac{1}{2}mv_0^2+\frac{1}{2}kx_0^2\]
である。\(v_0\)は初速度、\(x_0\)は初期位置である。
さて、今回のやり方は等加速度型の運動方程式にも適用できるが、空気抵抗型では不可能である。それでは、等加速度型、空気抵抗型、調和振動型すべてに対応しうるやり方はないのかという問題も興味深いが、さしあたって、その問題はまずは脇へ置いておいて、今回登場した積分、
\[\int \frac{1}{\sqrt{1-x^2 }} dx\]
の周辺の世界を旅してみよう。この高校生レベルの積分が数学のあらゆるところと結びついてるということに面白味を感じてもらえるのではないだろうか。それでは、また今度。
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