Cafe Lagrange (雨読編12:定数係数二階微分方程式の解き方 その4《定数変化法は嫌いだ編》)

Cafe Lagrange 雨読編

 雨読編11での『珍人』についての深く鋭い考察論文が中さんより届いたので、まずは読んでいただきましょう。

 M木教授が「防人教授(オヤジのこと)は珍人ですな」と普通にコメントしてしまうことからも分かるように、『珍人』と言われる人には、所謂『自覚症状』がない。つまり、客観的に自分の行動や言動は把握できているが、それが『一般的な意味での正常』か否かが判断できないのだと思う(客観的に自己行動や言動を把握できずに常に正常だと思っている人は統合失調症と診断される)。ここで言う『一般的な意味での正常』のことを我々は『常識』と呼んでいるわけだが、この『常識』は言葉上の定義があるわけではなく、社会生活の中で他社とのコミュニケーションを取りながら習得するものである。であるから、「常識って何?」と問われても回答しにくく、国や場所、コミュニティ毎に『常識』は変化するので、上記のような質問の仕方自体に意味はない。以上から、各共通のコミュニティ内には『珍人』はいないが、コミュニティ間の繋がり、すなわち、相互作用が発生した瞬間、『珍人』が生まれることになるのだと考える。つまり、あるコミュニティから別のコミュニティを見ると、そこの人々はみな『珍人』、すなわち『エイリアン』そのものなのだ(alien:「外国人、見知らぬ人」の意味。宇宙人。異星人。転じて異星人のように見える人)。ジャガー・ランドローバー京都から見ると防人君はエイリアンであり、防人家から見るとM木教授はエイリアンなのだ。しかし、これまで主として身を置いてきたコミュニティの中では立派な『常識人』なのだ。

 まあ、研究を生業としている人のコミュニティは目覚ましく限定的なのでエイリアンが生まれやすい陪地となるんだろうね(笑)。一般的にバナナは持ち歩かないし、お邪魔しているお宅の夕飯時間にはおいとまする配慮が大人の振る舞いだよね。但し、私はエイリアンが好きです。

 なるほど、異なるコミュニティ間の交流が珍人を形成するわけだ。僕が所属した数学や理論物理の大学、大学院時代のスタッフ達は外車を持っていなかった。というより、方程式やベクトルには異様に興味があるのに、車に興味ある人はとても少なくて、「車は動けば良い」的人々の集団であったのだ。ましてや、趣味的傾向が強いランドローバーの車を知っている人は皆無であっただろう。つまり、数学・物理コミュニティとランドローバー京都のコミュニティ(お客さんの多くは会社経営者、お医者さん、役職が上の会社員などと思われるが!?)との相互作用は皆無であったと思われる。そこに、数学・物理コミュニティに近い防人が登場したものだから、ランドローバー京都のM田さんから見るとエイリアン登場となったわけだ。ナルホドねぇー!。深い考察だ。ただ、僕から見てM田さん達ランドローバー京都の人々は『珍人』に見えなかったので、異なるコミュニティー間でも『珍人』と思われるのは一方的で、他方からはそう思われないのだろう。二つのコミュニティ間(圏論という数学では”二つの対象”間)で矢印(圏論では””という)は一方的で双方向ではないのだ。この辺の対象間のの向きを決める条件は多数派から少数派?など一体何が決めているのだろう。中さんの解説を期待したいところだ。

 そう言えば、異なるコミュニティ間で育った連中が一堂に会する場面がある。それは大学の入学時である。異なると言っても、例えば、理学部数学科や物理学科に志望して集まってくる連中は、だいたいは似た者同士であるので、そう大きな隔たりはない。しかし、学科の特殊性からか、数理的センスにずば抜けた特性を持つ非常に優秀な人が数%はいる訳で、そのような人々は理学部志望者から見ても無茶苦茶『珍人』なのである(防人が所属する多数派である凡人のコミュニティと少数派の天才のコミュニティの交流?この場合も凡人という対象から天才という対象に向けてが出ている)。僕が入学した時も、そのような人間としてN君がいた。

 N君は高校時代に電子顕微鏡の精度に関する論文(詳しくは知らないが)を書いていて、大学入試もそれが高く評価され、多分、ほぼ無試験で入学してきたらしいのだ。風貌は入学当時ですでに大学教授風、歳不相応に落ち着きがあり、近づき難い雰囲気が周囲に漂っていた。

 N君との出会いは、忘れもしない新入生のための自主ゼミ決定の会場であった。これは、先生と大学院生がタッグを組んで、輪講していく本を決めておいて、新入学の学生たちは自分たちが読みたい本の先生の所に行って説明を受けるというものだった。これは自主ゼミであって単位には関係がないのだが、多くの数学物理に興味がある学生が参加していた。この時僕は少し早めに会場に行ったため、先生や院生が数人しかおらず、新入生もまだあまり来ていなかった。その会場の中央に、大学教授風の人物が腰掛け、隣にはパソコン(1990年のパソコンは当然MSDosで、ノートブック型でも重く大きかった)や本などが沢山入った大きなカバンが置かれていた。そして、彼はヘルマン・ワイルの『空間 時間 物質』を読んでいた。正面に回り込んでみると、顔の色つやは若々しく、教授とかではないものと思われたので、僕は大学院生だと思って気楽に話しかけてみたのだ。

「何を読んでいるのですか?」

「これかーッ!これはワイルの本やぁー。一般相対性理論で大変革された空間、時間や物質概念を大変美しく解説してる名著やでぇーッ。これは君も読むとええわっ」

 この時、僕は彼のしゃべり方は関西弁だとばかり思っていたが、後々分かった事ではこれは三重弁だったらしい。ただ、現在でも三重弁と関西弁の違いを理解していない防人なので、彼の当時のしゃべり方についても、三重弁とも関西弁とつかずに記述してるので、関西の方、そのあたりは勘弁してくだせい。

「何を研究されているのですか?相対論ですか?」

僕は彼が院生だと思っているので、院生としての研究課題を聞いたのだった。

「ワシかーッ!昔は電子顕微鏡の精度向上について研究をしておったけどなぁ。現在は相対論やゲージ理論方面に鞍替えしようと思って勉強しておる所やッ」

「へぇ―ッ!」などと会話を交わしているうちに、自主ゼミ決めが開始されたので、彼との会話は打ち切りにして、僕は「力学的微分幾何」の本を読むチームに所属することにした。すると、そこにさっきの彼もいるではないか。当然僕は大学院生だと思っているので、このチームには先生1人と、院生が2人もついてくれるのかと感動したのだった(ゼミ生は5人)。先生(教授で非線形力学系の専門家だった)が、

「それでは、新入生同士もお互いのことを知らないでしょうから、自己紹介をしましょう」

と号令をかけたので、一人ひとり自己紹介を始めた。僕は「筋トレが大好きな元気な一年生の防人です」的な挨拶をしたのを今でも覚えている。そして、5人目も終わって後は院生の紹介かと思っていると、例の彼がつかつかと前にやって来て、

「新入生のNです。どうぞよろしくお願いします」(なんだお前新入生かいッ!)

と標準語で礼儀正しく挨拶するではないか。なんと、彼とは同学年だったのだ。それも彼は現役でこちらは一浪だから、防人の方が一年上なのである。だけど、彼の風貌や立ち振る舞いは同学年の学生には見えなかった。その後、彼とは親しくなり色々と行動を共にしたのだが、それで分かったことは精神年齢は防人よりさらに低いということだった。

 Nはコンピューターにめっぽう強かった。かれの下宿のPCはソフト面だけでなく、ハード面でも改造が加えられ、色々なものがくっついていたし、市販のモノとははっきり言って別物の高速マシーンと化していた。そして、プログラムを組んでは企業に提供していて、そこから収入を得たりしていたし、特許もあるらしく、特許料も入っていたので、学費はそれで充分まかなえるとのことだった。まあ、彼の家は官僚の裕福な家だったらしいから、学費に困っていたわけではないのだけれど。また、暇な時は”トランジスター技術”とかいう複雑な回路がいっぱい載っている雑誌を愛読してた。

 Nは大学近くにある”マウンテン”とうレストランに毎週末通っていた。ここは、名古屋で有名なご飯屋さんで、登場する料理、かき氷、すべてがマウンテン(山盛り)なのだ。しかも、巨大な皿の底には、油分が析出してねっとりしていたし、店全体もネチャーッとした感じのところだった。一度、彼について行ったことがあり、その時、彼は

「防人は大食らいだから、ダブル行けるだろう」

というものだから、ホワイトソースピラフのダブルを頼んだのだが、登場したものは人間の食べられる代物ではなかった。エベレストのような盛り付け、お皿の底にはにねっとりたまった油、膨大な量のホワイトソース、四五口食べてギブアップしたしまったのだが、Nはその僕の食べ残しをペロリと平らげて、自分の注文したものも完食してしまったから驚きだ。いつもは食後のデザート代わりに、”小倉抹茶スパ”(説明しよう!小倉抹茶スパとは、抹茶で甘く味付けされた緑色のスパゲッティの上にドカンと小倉と生クリームが乗っているマウンテンで有名なメニューなのだ。よく部活で新入生とマウンテンに行き、いじめる時にこれを注文する)を食すようだが、この時は防人の食べ残しがあったので、流石のNもお腹がいっぱいとのことだった。彼はココの常連で、小倉抹茶スパのダブルも食していたので、店の人から一目置かれていて、裏メニューの(常連で、一定の基準を越えた客だけがオーダーできる)小倉丼のダブルも食せる立場にあった(説明しよう。小倉丼とはストロベリーシロップで炊き込んだピンク色で極めてあまーいッ大盛りご飯の上に大量に小倉が盛り付けられているのである。大量のご飯の甘さと大量の小倉の甘さの二重攻撃に耐えられる生物はほとんど地球上には生息していない。店長はテレビのインタビューで「こんなもん、よく食うよッ」と吐き捨ているように言っていたことを防人は鮮明に覚えている。名古屋と言うと小倉トーストだと思っているヤツは、本当の名古屋の奥深さ、本当の怖さを知らない。小倉丼を食した経験もなく名古屋のことを語るなかれ)。このNの厄介なところは、マウンテンの常連のくせに、自分の舌は肥えていて、味覚偏差値は極めて高いと勘違いしてるところだった。数学物理では極めて客観的に判断を下す奴だったが、この食に関しては客観的判断が出来ていないようだった。

 出ったぁー!名古屋の味覚の確定特異点。仕事に行く途中に久しぶりにマウンテンの前を通ってみた。この看板は確か昔からあったはず。駐車場には沢山車が停まっていた。
 建物の位置が変わり、なんだか新しくなったようだぞ!流石に中には入って料理を注文し、その写真を撮り、食するだけの度胸は防人にはなかった。

 ある時、Nは目を輝かせながらやって来て、

「おいッ!防人、お前知っとったかぁー。heとかsheになると、sが付くんやでぇ―ッ!」

「…!?」

「せやからなぁー、I play soccerに対してやなぁ、He plays soccerッてなるねん。今日、この規則性を見つけたんやッ!防人は知ってたか?」

「おまえなぁー!これは中1くらいでやることだろう。今頃知るのは遅すぎやでぇーッ!」

そう彼は、数学、物理学、PCのプログラムについては極めてハイレベルで、冴えわたっていたのだが、苦手なものは本当に何も知らなかった。大学入試も関係なく、高校時代にあげた業績(電子顕微鏡についての論文)で大学に入ってきたものだから、英語についての知識は中学生より低かったかもしれない。おかげで、大学の語学の授業では苦戦を強いられて、留年の憂き目にあってしまったのだ。

 Nは色々なものの固有振動数を自分の体で測定することに夢中だった。だから、彼と一緒にエレベーターに乗ろうものなら大変な目に合うことになる。乗ると、彼は体を振動させ、その振動周期を肌身離さず持ち歩いているストップウォッチでチェックしながら、徐々に早くしていくのである。そして、固有振動に近づいてくるとより大きく体を動かし始めるのだ。そのため、エレベーターは上下に激しく振動を開始し、途中で緊急停止してしまうのである。僕は理学部B館のエレベーターで彼と二度ほど一緒になり、その二回とも緊急停止させられてしまった。一回目はちょうど三階だったので何とかドアを開けて外に出て事なきを得たのだが(でも、エレベーターは停止したままだったが!?)、二度目は途中で停止したため、電話で助けを求めるハメになったてしまったのだ。全く迷惑な奴だった。

 Nは放射性同位元素を集めるのが趣味だった。アメリシウムだとか、セシウムだとかいろいろ持っていた。そして、また、ガイガーカウンターらしきものを自作しそれもいつも持ちあるいてた。ある時、物理の授業中、僕の後ろでガイガーカウンターの”カチッカチッカチッ…”というカウント音が聞こえてきた。「何だなんだ⁉」と思っていると、後ろからNが

「防人、今被爆中やでぇーッ!気いつけぇーやぁッ」

と言ってきた。何かと思って振り返ってみると、なんと、放射性元素の格納容器の鉛の蓋がオープンされていて、僕の方にその明け口が向けられているではないか。そして、格納容器と僕との間に、N自慢のガイガーカウンターが設置され、そいつがカチカチやっていたのである。

「オイオイッ!悪い冗談はよせやぁー。授業に集中できないだろうーッ!」

「こいつはなぁー、アルファー型崩壊をする元素やから、防人が着ているTシャツで十分遮蔽されるからなぁー、大丈夫なんやッ」

「そういう問題じゃあないだろうッ。いい加減にせいッ」

「科学的事象を客観的に見れない奴だなぁー、防人は!」 僕は返す言葉が見たらなかった。

 また、ある時Nは僕にこんなことを聞いてきた。

「なあ、防人は年に何回歯を磨くんやぁー?」

「年に!?、それを聞くなら”一日に何回磨く”だろう」

「ワシはなあ、年に三回やッ!正月と盆と誕生日の日や」

「そんなんで虫歯はないのか?」と僕が聞くと

「全く無いなあ。歯垢がプロテクトしてくれているんやろうなあ」

僕なんかは朝昼晩と磨いているのに、虫歯がある。そして、歯医者さんに行かなくてはならない状況に定期的に追い込まれているのに、Nは何と羨ましい歯を持っているのだ。そんな彼も、結婚したらしい。奥さんは大丈夫だったのだろうか?

 今回も、雑談が長くなってしまった。ここからが本論開始なので、よろしく。

斉次二階微分方程式 : \(\displaystyle \ddot{x}+a\dot{x}+bx=0 \)

\(\displaystyle \boldsymbol{y}=\left(\begin{array}{c} x \\ \dot{x} \end{array}\right) \)なる二次元ベクトル\(\boldsymbol{y}\)を導入し、上記方程式を書き換える。

一階微分方程式:\(\displaystyle \frac{d}{dt}\boldsymbol{y}=\boldsymbol{A}\boldsymbol{y}\) …(*)  但し、\(\displaystyle \boldsymbol{A}=\begin{pmatrix}0 & 1 \\ -b & -a \end{pmatrix}\)

 (*)の解:\(\displaystyle \boldsymbol{y}=e^{\boldsymbol{A}t}\boldsymbol{c} \) …(sol) 但し \(\boldsymbol{c}=\left(\begin{array}{c} c_1 \\ c_2 \end{array}\right) \) 

 ここで、\[\displaystyle e^{\boldsymbol{A}t}=\boldsymbol{1}+\frac{1}{1!}\boldsymbol{A}t+\frac{1}{2!}\boldsymbol{A}^2 t^2+\cdots \frac{1}{n!}\boldsymbol{A}^n t^n \cdots \]を計算するために\(\boldsymbol{A}\)を対角化またはジョルダンの標準形に持ち込む必要があった。そこで、固有方程式を考えることが重要となった。

固有方程式\[\mathrm{det}\left(\boldsymbol{A}-\lambda \boldsymbol{1} \right) = \begin{vmatrix}
-\lambda & 1 \\-b & -a-\lambda
\end{vmatrix}=\lambda^2+a\lambda+b=0\]

 さて、今回は\(\displaystyle \ddot{x}+a\dot{x}+bx=0 \)を上記のように行列を経由することなく、微分方程式の教科書で演算子法と呼ばれているやり方ぽっく解いてみよう。

 ここで、\(\partial=\frac{d}{dt}\)と置けば、\(\displaystyle \ddot{x}+a\dot{x}+bx=\left(\partial^2+a\partial+b\right)x\)と書けるので、\(\displaystyle P=\partial^2+a\partial+b\)と置くと、斉次二階微分方程式は\(Pu=0\)と簡潔に書ける。また、

\[ P=\partial^2+a\partial+b\ \longleftrightarrow f(X)=X^2+aX+b \]

と対応させてみよう。ここで、右の多項式の\(X\)は変数というより、不定元と考えている。この微分演算子\(\partial\)は代数的操作では\(X\)と同じ性質を持つので、多項式の因数分解や多項式同士の掛け算と同様に計算して良い。

①固有方程式が相異解\(\lambda_1\)、\(\lambda_2\)を持つ場合!

  固有方程式:\(\displaystyle \lambda^2+a\lambda+b=(\lambda-\lambda_1)(\lambda-\lambda_2)=0\) 

と因数分解できる。であるなら、\(P\)も以下のように、

\[ P=\partial^2+a\partial+b=(\partial-\lambda_1)(\partial-\lambda_2)\]

とできる。よって、斉次二階微分方程式は以下のようになる。

\[ Px=(\partial-\lambda_1)(\partial-\lambda_2)x=0\]

 これは以下のように一般解を求めるのが普通である。

\((\partial-\lambda_1)x=0\)、または、\((\partial-\lambda_2)x=0\)

 それぞれの微分方程式は\(\dot{x}=\lambda x\) 型であり、この解は以前やったように\(x=Ce^{\lambda t}\)となるのであった。これより上式それぞれから、\(C_1 e^{\lambda_1 t}\)、\(C_2 e^{\lambda_2 t}\)なる解が得られる。

コーシーの定理》2階常微分方程式は、高々2個の線形(一次)独立な解しか持たない。

 よって、一般解:\(x=C_1 e^{\lambda_1 t}+C_2 e^{\lambda_2 t}\)が求まることになる。しかし、このやり方は何となく腑に落ちないと防人は思ってしまうのだ。\(x\)が、\((\partial-\lambda_1)x=0\)、または、\((\partial-\lambda_2)x=0\)を満たせば、\( (\partial-\lambda_1)(\partial-\lambda_2)x=0\)を満たしていることになるが、\( (\partial-\lambda_1)(\partial-\lambda_2)x=0\)を満たすが、\((\partial-\lambda_1)x=0\)、と \((\partial-\lambda_2)x=0\)を満たさないような\(x\)があるかもしれないではないか?(そのような\(x\)は無いですよと言うのが”コーシーの定理”なのだが、なんだか、コーシーの威を借る方法と思えてしまうのだ)。それに、本ブログの説明の流れ的にも沿っていないので、以下の《補足》のように考える方が僕は好きである。

《補足1》雨読編の微分方程式その1その2、の流れ的には以下のように説明した方が自然かもしれない。

\[ Px=(\partial-\lambda_1)(\partial-\lambda_2)x=(\partial-\lambda_1)\{(\partial-\lambda_2)x\}=0\]

と変形して、\(u=(\partial-\lambda_2)x\)と置いてみると、上式は、

\[ Px=(\partial-\lambda_1)u=0\]

なので、この解は\(u=C e^{\lambda_1 t}\)となる。よって、以下の非斉次型微分方程式

\[(\partial-\lambda_2)x=u=C e^{\lambda_1 t}\]

を得る。よって、これを解くためにKernel解\(x_k\)と特解\(x_p\)を求めればよかった。

《Kernel(核)の決定》\(\displaystyle (\partial-\lambda_2)x_k=0\)の解は\(\displaystyle x_k=C_2 e^{\lambda_2 t}\)となる。

《特解の決定》\(\displaystyle (\partial-\lambda_2)x_p=C e^{\lambda_1 t}\)を満たす特解を発見する。そこで、

\[x_p=(A+Bt)e^{\lambda_1t}\]

と置いてみて、非斉次方程式に代入して\(B=0\)、\(\displaystyle A=\frac{C}{\lambda_1-\lambda_2}\)(\(=C_1\)と置く)を得る。つまり、特解は\(\displaystyle x_p=C_1e^{\lambda_1 t}\)である。よって、一般解は

\[x=x_k +x_p=C_1 e^{\lambda_1 t}+C_2 e^{\lambda_2 t}\]

を得るが、これは上記での説明と同じ答えになっている。

②固有方程式が重解\(\lambda_1\)を持つ場合‼

  固有方程式:\(\displaystyle \lambda^2+a\lambda+b=(\lambda-\lambda_1)^{2}=0\) 

と因数分解できる。であるなら、\(P\)も以下のように、

\[ P=\partial^2+a\partial+b=(\partial-\lambda_1)^2\]

とできる。よって、斉次二階微分方程式は以下のようになる。

\[ Px=(\partial-\lambda_1)^{2}x=0\]

この方程式の解を求めるには、

\[ (\partial-\lambda_1)x=0\]

の解\(\displaystyle x=C e^{\lambda_1 t}\)の定数\(C\)をいきなり関数\(C(t)\)と考えて(定数変化法とか言ったような!?これが嫌いなのである。まあ、よく理解していないだけなのだが!)、

\[\partial x=e^{\lambda_1 t}\partial C(t)+\lambda_1 C(t) e^{\lambda_1 t}=e^{\lambda_1 t}\partial C(t)+\lambda_1 x\]

となるので、

\[(\partial-\lambda_1) x=e^{\lambda_1 t}\partial C(t)\]

を得る。よって、

  \(\displaystyle0=(\partial-\lambda_1)^{2}x=(\partial-\lambda_1)\{(\partial-\lambda_1)x\}\)

    \(\displaystyle =(\partial-\lambda_1)(e^{\lambda_1 t}\partial C(t))=e^{\lambda_1 t}\partial^2C(t)\)

となるから、 \(\displaystyle \partial^2C(t)=0\) の解を求めればよい。これは簡単で、\(C(t)=c_1+c_2 t\) となる。よって、一般解は

\[x=(c_1+c_2 t)e^{\lambda_1 t}\]

になるというやり方。あまりにうますぎて騙されたような感じになる。それに、固有値が相異解をもつ場合に比べてやり方が違い過ぎて(と防人には思えてしまう)、なんだかついて行けないのだ。やっぱり、以下の《補足2》のように、どちらも同じような思考でやる方が統一的で美しいと思ってしまうのだ。

《補足2》これも上記《補足1》と同様に以下のようにやる方が僕には自然に感じる。

\[ Px=(\partial-\lambda_1)^{2}x=(\partial-\lambda_1)\{(\partial-\lambda_1)x\}=0\]

上記の固有方程式が二解をもつときと同様に、\(u=(\partial-\lambda_1)x\)と置いてみると、上式は、

\[ Px=(\partial-\lambda_1)u=0\]

なので、この解は\(u=C e^{\lambda_1 t}\)となる。よって、以下の非斉次型微分方程式

\[(\partial-\lambda_1)x=u=C e^{\lambda_1 t}\]

を得る。よって、これを解くためにKernel解\(x_k\)と特解\(x_p\)を求めよう。

《Kernel(核)の決定》\(\displaystyle (\partial-\lambda_1)x_k=0\)の解は\(\displaystyle x_k=C_1 e^{\lambda_1 t}\)となる。

《特解の決定》\(\displaystyle (\partial-\lambda_1)x_p=C e^{\lambda_1 t}\)を満たす特解を発見する。そこで、

\[x_p=(A+Bt)e^{\lambda_1t}\]

と置いてみて、非斉次方程式に代入して\(B=C\)となるが、\(\displaystyle A\)は決まらない。つまり、特解の候補としては\(\displaystyle x_p=Bte^{\lambda_1t}\)と置くべきだったと悟るわけだ。兎に角、特解は\(\displaystyle x_p=Cte^{\lambda_1 t}\)である。よって、一般解は

\[x=x_k +x_p=C_1 e^{\lambda_1 t}+Cte^{\lambda_2 t}\]

となる。これらのことは前回(その3)と一致する結果が得られたことになる。メデタシめでたし。

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