一週間前に開化期を迎えた防人なので、それを決定づけるべく、一週間後の5月29日も釣りに出かけ、魚のサイズでの203(フタマルサン)高地を奪取しようと思ったのだった。うまい具合に、息子のトクチンは修学旅行でおらず、奥さんは仕事が忙しい。
「今日は遅く帰ってきてもいいよ」
と言われたので、下呂、高山、荘川方面の川たちを思い浮かべていた。しかし、前日の28日は線状降水帯を伴う雨で、東海地方一帯がずぶ濡れになったのだ。どの川も水位が高く、遠出したところで濁流でただのドライブするだけというのも開化期の防人としてはもったいない。そこで、一週間前の良い思いを再び味わおうと寒狭川水系島田川を目指す。いつも通り、301号で作手の古宮城の所を左折し県道436号線を島田川に沿ってクニャクニャ運転する。しかし、激い雨のせいなのか、一週間前の道路とは激変していて、倒木や枝が至る所散乱していて、まるでダートロードのようだ。木の枝がないところは激しく水が流れていて、スリル満点の運転を余儀なくされる。毛バリ専用区域に突入してすぐのところで、道の中央部にゴロンと大きな岩が横たわっていて、行く手を阻んでいるではないか。軽自動車ならかろうじていけるかどうかの隙間があるが、ディフェンダーは無理だ。それに、島田川もかなりの増水で濁りが入り、釣にならなそうである。仕方なくUターンし、来た道を登り返す(このような狭い道でのUターンの時、ディフェンダー90は小回りが利くので気楽だよね)。ハンドルを右に左に切りながら、
「はてッ!どうしたものか。こうなったら、作手に戻って県道35号線で当貝津川に行ってみるか」
と思い直し、再び古宮城の所を右折し、35号線から鳴沢の大滝を経て当貝津川に到着。こちらの方が、島田川より濁りがなく、何とかやれそうである。まあ、そうは言っても水が高いので、なるべく上流目指して登って行き、愛知県淡水養殖(漁協)付近に車を停めて、そこから釣り上がってみようと思った。路肩には軽トラックが一台停まっていて、その運転手のおじいさんが漁協の草を刈っていたので、
「ここに車を停めてもいいですかね?」
と聞いてみると、
「いいだら!釣りん衆はここン停めてみんなやっとるでぇ。まあ、警察はナン言うか知らんがぁネ」
という返事だったので、この軽トラの隣に停めて準備を始めたら、再びこのおじいさん戻って来て、
「わざわざ京都から来たんかぁー」
と聞かれたので、代車だとかエンストだとか説明するのが面倒だったので、
「そうドスェー」
と答えると、
「わざわざこんなところに来んくても、岐阜とかにもっといい釣り場があるだらぁー。あんたも物好きな人だなあー」
と感心されてしまった。こちらも、京都人ぽく
「おおきにぃー。ほな失礼しますぅー」
と言って川に向かったのだった。おじいさんは三河弁だったが、当然防人は三河弁のネイティブではないので、会話は三河弁ぽく再現しただけである。

路肩に代車ディフェンダー君を停めて、準備に取り掛かる。それにしてもこの20年の間にすっかり道が良くなってしまったなあ。昔はすれ違いが大変な道だったのになあ。

愛知県淡水養殖(漁協)裏の当貝津川の流れ。川は増水気味だが、澄んでいてこれなら釣りになるかな。しかし、最近のヨタヨタ防人には増水した川の遡行は大変そうだ。
川はやっぱり水位が高く、徒渉を試みると、水勢は激しく簡単に膝上、時に腰までつかってしまう。昔は川の徒渉は得意だったのだが、最近はヨタつくので怖くて仕方がない。ヨロヨロゆっくり川を右に左にウロウロしながら、毛バリをポイントに投入していく。とても広大ないい感じのポイントが眼前に現れたので、下流側から丁寧に探っていくが、毛バリに反応はない。左岸にある淡水養殖場からおばさん(おばあさん)らしき人が現れ、こちらを見ているようだが、毛バリに集中しなくてはならい防人としては挨拶している暇はない。河原は広いので、ロングキャストで思う存分竿が振れるのは気持ちが良い。かなり遠くからポイントを探っていく。おばあちゃんはまだ見続けている。
『釣りする阿呆に、見る阿呆、同じ阿呆なら釣らなきゃ損ソン…』
釣りバカ日誌の浜ちゃんがよく言っていたような気がする。かなり遠くに毛バリが着水し、流れに乗っていい感じの速度でドリフトしてくる。すると、いきなり、毛バリの下が盛り上がり魚が毛バリを銜えながら体半分飛び出してきた。着水と同時に合せを入れると生命の躍動感が伝わってきて、瞬間的に脳みそが蒸発。視界のおばあちゃんに心で、
『開化期の防人をしっかり目に焼き付けてくれよ』
と叫びまくる。これはまたしても自慢ブログがかけるぞとワクワクしながら手繰り寄せてくるが、いきなり走られ、竿を左に倒していなそうとするが、次の瞬間、竿から伝わってきた躍動感は消失し、ラインが宙を舞い、目の前にフワフワと毛バリが落ちて来て川面に漂った。
『ウォー―――ッッッーーーーッ!』
心で叫びまくる。脱力と共に右を見るとおばあちゃんが
「嗚呼ーッ、もったいないねぇー」
と話しかけてきた。肩をすぼめるジェスチャーで返すと、
「あんたぁー、京都から来たんだって!(情報が伝わるのが早いぜぇーッ!)」
「はあー、まあー、そんなところでェ(しまったッ、京都弁で話さなくては!)」
「それにしても、投げるのはまあまあうまいけんど、魚を釣るのはへぼくそやねぇー」
「へえー、おおきにぃ―(このババア―、一言多いぞッ!)」
「まあ、まだ昼間だでぇ、午後も釣り頑張りん」
と言っておばあちゃんは養魚場の建物の中に入って行った。防人は脱力感甚だしく、意気消沈してしまったので、昼飯タイムにした。
その後、二回ほど毛バリに食いつき魚とのやり取りをするが、一匹目はすぐにバレてしまい(針が外れてしまったということ)、二匹目は手元まで手繰り寄せたのにもかかわらず、バチャバチャやられてまたしてもバレてしまった。サンタルチヤー、何たるチヤァー!

おばあちゃんが見る中、黄色矢印に従って毛バリをドリフトして、黄色まるの所で魚が真下から飛び出してきた。前回(一週間前)ほどではないが、今日ばらした魚の中では一番大きかったハズ!

昼飯でも食べて、気分を入れ替えよう。今日はいつものチャーハンとファミマで買った"てりやきチキン”を温めて、それをおかずにして食すことに。

写真は上流から撮っているが、狙った時は下流から。毛バリを流してきたら、上流から追いかけて来てパクッとくわえたのだ。合せ入れると、躍動感が伝わってきたがすぐにバレてしまった。大きさ20㎝前後かなあ!

ここはイワナが飛び出してきた。しっかりフッキングして、これは写真撮れるだろうと思って、足元に寄せたら、そこでバチャバチャされて、次の瞬間ハリが外れて、一目散に流れに戻っていたった。20㎝弱の岩魚。
結局、この日は何れのチャンスもものにできず、ボウズッ!開化期を迎えた防人の天下は一週間で潰えてしまったのだ。何たる残念、無念!
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