目が覚めて、時間を確認すると朝5時前だった。体全体に汗がにじみ出している。しかし、これも四日目となるとあまり不快に思わなくなっている自分がいる。寝るときの気温は28度、熱帯夜だ。それでも朝は涼しげな風が吹くので救われる。息子はまだグウグウ寝ているが、木々など遮るものがあまりないこの道の駅で、お日様さんにあいさつされると暑くてたまらないので、今のうちに朝食を食べてしまおう。トクチンをたたき起こし、向かいのベンチで朝食の準備開始。のんびり食べていると、トクチンが
「今日は日曜日だから、”どうする家康”と”VIVANT”をやるけど、どうする?」
と洒落ともとれる質問してきたので思わず笑ってしまった。確かに、このままでは見ることが出来ないので大問題だ。そこで慣れないスマホで調べてみると、大宰府の近くに二人で7000~8000円くらいで泊れそうなビジネスホテルがあり、そこが空いているようなので急遽予約を入れる(こういう時、スマホは便利だとつくづく思う)。これで、今夜は”どうする家康君”と”VIVANT”両方見ることが出来るし、何と言っても、汗だくにならずに体を伸ばして眠ることができる。最高の贅沢ができることになったのだ。そうこうしていると正面の山が明るくなり出し、いよいよお日様のご登場のようだ。さっさと荷物を片付け、さきもりちゃんに積み込みエンジンスタートする。斜め前にあったファミマに行き、今日はまろやかコーヒーから浮気をして(毎日飲んでいたので、流石にね!)、イチゴたっぷりのイチゴミルクを買って飲む。イチゴがふんだんに入っていて甘くて一気に活動モード状態に。まずは、下関、そして関門トンネルだ。いよいよ九州に渡るぞ。
《補足》TBS版”砂の器”を監督したのと同じ福澤監督が確か”VIVANT”も担当しているのである。彼は松江が気に入ったようで、今回の”VIVANT”でも松江が登場する。主人公の乃木の過去を調べに野崎刑事が松江に来て、乃木の実家を訪れるシーンは、砂の器で、和賀英良(本浦秀夫)の過去を調べるために今西刑事が桐原小十郎邸を訪れて、浮浪者の親子の正体があの大量殺人の犯人本浦千代吉とその子供の秀夫であることを聞き出すシーンとそっくりだった。乃木の実家として使われた家と桐原小十郎邸は、どちらも同じ島根県仁多郡奥出雲町にある”たたら製鉄”で財を成した「櫻井家住宅」なのだ。

朝起きると、湿った掛け布団をさきもりちゃんに干すことから一日が始まる。まだ、この時間は気持ちが良い。

助手席で熟睡するトクチン。ディフェンダーはあまりリクライニングしないので寝心地は悪いのだが、寝心地の良し悪しは彼には関係ない。

下関と門司を結ぶ関門トンネルだ。名物のふぐの絵がかわいい。まあ、今回の節約旅には、もちろん、時期的にもフグ料理は無関係か。

関門トンネルの中。今まさに関門海峡の中央部。この上は海だ。子供の頃、海底トンネルという響きに近未来感を感じたものだった。
関門トンネルを抜けて、標識が出てきてハタと困ってしまった。旅に出る前、京丹後から日本海側を経由してJR山口線の篠目駅までのルートは頭に入れていたので、何とかなったが、九州は福岡、大宰府しか意識していなかった。関門トンネルを抜けて、北九州、小倉、直方、水巻などの地名が出てくると前後左右関係が全く分からなくなってしまった。北九州は北なので、この近くなのだろうが、小倉と北九州はどういう関係なのか、水巻は?と?マークで頭がいっぱいになってしまう。何分、センター試験の地理は37点だったからね。そこで、仕方ないので九州自動車道を使い、一気に大宰府まで行ってしまうことにした。それに、沖縄をウロウロしていた台風6号がここにきて九州地方に向けて進軍を開始したという情報を入手。あまりのんびり九州を探索している時間的余裕がなくなってきそうだった。更に、大宰府自体も見どころが沢山あり、早めについた方が今日一日じっくり防衛、じゃなかった、見学ができると思われた。一石三鳥なのだから高速を使わない手はないぞということで受け入れることにしたのだ。

大宰府政庁の背後にそびえる四王寺山に築かれた大野城に到着。

百間石垣は、敵の侵入を防ぐため、石垣の外壁面は74〜76度の急な傾斜になっている。

高さ8m、幅180mに渡り石垣が築かれている。大野城に残された石垣の中で最大規模。

版築土塁(はんちくどるい)が大野城をぐるりと一周取り巻くように巡らされている。

眼下には大宰府の街並みが。ここを防衛するために我々は名古屋から防人としてはるばるやってきたのだ。この大野城でも防人が日々活躍していたに違いない。
大宰府に到着して、最初に向かったのが大野城(”おおののき”と読む)だ。この城が築城されたのは665年の飛鳥時代。日本で見ることが出来る最古級の山城で、このレベルの古城を古代山城(こだいさんじょう)といい、西日本に30ほどしか存在していないようだ。その中でも大野城は国指定特別史跡で国宝級だ。戦国時代の山城と異なり(例えば月山富田城)、古代山城は丘や窪地を版築土塁や石塁でぐるりと一周数キロ(大野城の場合は8㎞)にわたって取り囲むように防御している。倭国が百済の高官から指導を受けて構築したので、朝鮮式山城とも呼ばれている。我々はこれまでに滋賀、愛知、三重、岐阜、静岡、長野、京都の山城を100以上みてきたのだが、このような山城は見たことがなく全く初めての体験だった。この大野城は見どころ多く、とても一日で回りきれるものではないが、暑さのためダウンしチョビット見て回っただけで下山することに。情けない話である。

次に我々は太宰府天満宮にやってきた。観光客の自動車でいっぱいだった。

暑いなか防人君を抱っこして天満宮に向かう僕。暑苦しいったらありゃしない。

大勢の人が出入りしていたが、防人君をもって僕が登場すると、みんな通るのを躊躇し、様子見の状態。多くの人に囲まれての写真撮影。トクチンは遥か彼方で他人を決め込んでいる。

本当は正面玄関でパチリと撮りたかったけど、大勢の人でにぎわっており、とてもそんなところに車を乗り入れる雰囲気ではなかった。というか、車両通行止めだったかな。

本殿は124年ぶりの大改修工事中だった。

暑い中、本殿に向けて歩く人々。

こちらも人人人…。

建築家・隈研吾氏設計のスタバ―!
大野城から下山して次に向かったのは太宰府天満宮。ここは学者菅原道真を祭っている全国天満宮の総本宮でもあるが、防人とはあまり関係ないかも。しかし、大宰府とくれば天満宮だし、梅が枝餅も食べたいしということでやってきた次第だ。さきもりちゃんをコインパークに停めて(日曜日だが割と空いていた)、防人君を抱っこして天満宮に向かう。息子のトクチンはこちらと距離を取り出して近づこうとしない。中に入ると、すごい人人人…。今回の旅で最大の人口密度に閉口する。しかし、めげずに人でごった返す楼門に向かって歩いていき、防人君を楼門において周囲を見ると、あれだけ人が出入りしていたのに、みんな躊躇して様子見をしている。トクチンは遥か彼方で他人のふりをしている。仕方なく鎧の位置を正して写真を撮り終わる頃には僕の背後には人の輪が形成され、みな何事かという表情。小さい女の子が「かわいい」と言ってくれたが。防人君を再び抱き上げ、周囲の人に頭を下げ、本殿に向かうと、なんと、改修工事中のようで本殿の写真は撮れなかった。残念。
その後、梅が枝餅屋さんが軒を連ねる通りに行き、二種類ほど食べてみたが、どちらもホカホカで美味しかった。しかし、日持ちしないので買って帰るのは諦めることに。そして、これから我々が見て回る場所をどうするかを決めるため、観光案内所のボランティアの人に防人関係の施設を聞いてみると、大宰府政庁、水城(みずき)、鞠智城(くくちのき)、それと、高さ5m級の三体の観世音菩薩をはじめとする仏像群と重要文化財を目の当たりにすることが出来る観世音寺を薦められたので行ってみることに。但し、鞠智城は熊本県の菊池にあるので明日にするか。

大宰府政庁のDefenderとして活躍中の防人君。背後の山は大野城がある四王寺山。

政庁跡にはしっかり礎石も残されている。

大宰府政庁から歩いて10分ぐらいの所に観世音寺がある。その宝物館に高さ5m強の観世音菩薩が並んでいる。圧巻でした。
大宰府政庁を挟むように大野城(おおののき)と基肄城(きいのき)があり、更に、博多湾から大宰府に向けて二つの官道が造られていたようだ。その博多湾から官道経由の敵の侵入を防ぐために、ダムのような土塁が立ちはだかる。これが水城(みずき)だ。当時倭国がいかに大陸の唐などの脅威を感じていたかがわかる。ふと僕は、水城の前に一直線に並んだ新旧のDefender90、110,130を妄想して一人感動していた。

水城の東門側の端は大野城につながっている。もちろん、西門の端は小水城につながっている。

水城に官道が交わるところには門があったようだ。これは東門痕。敵はこの門から内へは絶対通さないぞということか。

東門側の高台(つまり大野城側)からの水城の眺め。ポツンとあるクスノキの下には防衛にあたる我がさきもりちゃんがいるね。

土塁の周囲は歩けるようになっている。残念なことに、水城は途中で九州自動車道で切断されている。なんとか、もっとうまく工事できなかったのか。残念だ。

水城のところの案内所でもらったパンフレット(大宰府史跡シリーズ・水城跡)より!

クスノキの下に佇む我がさきもりちゃん。日陰に停めたつもりだったが…。
我々は大宰府政庁の防御網の凄まじさに驚いて、一日とかでは全く回りきれないことがわかり、暑さで汗だくとなり、疲れ果てて今日の宿、ビジネスホテルAZを目指す。途中、お洒落なレストランに目が留まるが、兎に角、まずはチェックインをしなくては。部屋は二段ベットで足を延ばして眠れるし、クーラーあるし、テレビもある。至れり尽くせりで(これは普通なことか。しかし、テント泊、車中泊してきた我々には贅沢すぎてね)言うことなし。シャワー浴びて、今までの洗濯をして、少しくつろいでから夕飯をどうするかということになったが、ここは先ほど気になったレストラン、確か、”南”とかいう名前だったが、そこに行ってい見ようということになった。今日は、大宰府に旅立つ前日の山梨での本の整理の時、「Defender=防人」と訳してくれたYA氏夫婦が、
「福岡では美味しいものを食べなさい」
と我々の節約旅行にお金を恵んでくれたのである。今夜はそのお金で豪勢に行こうではないか。トクチンはハンバーグを注文するようだが、僕としてはメニューの一番目立つところにある”サマーコース”を注文することにした。値段は3000円くらいだが、オードブル、スープ、魚料理、肉料理、デザートとフルコース的な感じ。しかし、3000円とは逆に安すぎはしないか!
料理が提供され始めると、盛り付けの美しさ、味、量ともにバランスよく、これまた驚きの連続!こっこれが3000円とは!給仕の人に毎回料理の感想を述べていたら、デザートが食べ終わるころに、マスターが登場してきてくれて、話がたいそう盛り上がった。我々は8月1日から名古屋を離れ、ずっーと車中泊とかで旅を続けているのだということを話すと、そのマスターも若い頃、28日かけてバイクで日本縦断の旅をしたことを懐かしみながら一コマ一コマ思い出すように語ってくれた。道中では時に廃車になった車の中で寝たりしたらしい。愛知県を通った時は大府という町に知り合いがいて、そこの家に泊らせてもらったと言っていたなあ。更に、渓流釣りも好きで、僕もフライフィッシングをすることもあって九州の色々な川のことを教えてくれ、今まで釣り上げたヤマメやアマゴ(九州ではエノハという)の写真や動画も見せてくれた。挙句の果てには、
「旅の思い出として…、」
とはさみと紙を取り出して、何やら器用に切り出したかと思ったら、切り紙でカゲロウ、トンボ、クワガタ、…etcをどんどん作ってくれて、たしか、入り口に虫の標本があったなあと思ったが、実はそれらは標本ではなくマスターが造った切り紙の昆虫だったのである。更に、このマスターはバルーンアートも手掛けているらしい。本当に多趣多芸のマルチ人間である。おかげで、今宵のディナーは最高の旅の思い出となった。南さんありがとうございました。

建物の雰囲気に誘い込まれて!

"南”という名前のレストラン。

まず、オードブルだ。この後にビシソワーズが運ばれて来たけど、飲むのに夢中で写真撮り忘れてしまった。

スープの後は、魚料理。これがまたおいしくて、忘れられない味だった。最高だ。

牛肉のステーキ。大盛りご飯と共に食べて大満足である。

デザートはさっぱり系で、いかにも夏に涼しさを味わえた。エスプレッソを最後に頂く。

トクチンはハンバーグを注文!

デザートはアイスクリーム。

切り絵でクワガタ、トンボ、…続々と登場。

手先が器用で、釣り針も自分で作るとか!

最初は標本の虫たちと勘違いしていたが、これみんなマスターが作った切り紙の虫たちだった。
宿に戻り、”どうする家康”を見て、その後、”VIVANT”を見て、その時、乃木さんが「別班」であることが判明し愕然とするトクチンを尻目に睡魔に襲われたので僕はお先に夢の世界に突入。

久しぶりのクーラーの効くベッドで、テレビを見まくるトクチン!
コメント
防人様
大宰府到達おめでとうございます。暑い中、防人君担いでお疲れ様でした。暑い時の写真って綺麗ですよね。大野城背景の写真が1番気に入りました。
レストラン南もオードブル美味しいそうですね。これで3000円とはリーズナブルですね。洋食は好きなんですか?
何日か1回は宿で寝たいですよね。テレビも見たいし。
蒲田操車場で殺されないようにしないと・・・ちなみにスナックゆうことは線路挟んで逆なんですよね。出口も逆。意外と行きづらいです。
はい、対面した写真PCメールに送ろうと思ってました。是非見てください。
ありがとうございます。やっと到達しました。大野城背景の写真も太陽にグリルされながら防人君を抱きかかえていたので、本当に暑かったです。
レストラン南はトクチンと二人で5500円でしたから、本当にリーズナブルでマスターも本当に良い人でした。洋食は好きですが、フォアグラ、キャビア、トリュフ、更に、蟹味噌、白子、いくら、ウニ、・・・
といったグルメな人が好きなものは皆苦手でして、ハンバーグ、エビフライ、目玉焼き、カレー、とんかつ、ステーキ、みたいなお子様が好きなものが大好きなのでして・・・。
てんぷらも好きなのですが、てんぷらさんはてんぷら好きなのですか?
スナックゆうこではどちらが「カメダヶは変わりないですか」というセリフを言うかが、操車場に横たわることになるかのカギになりますね(笑)。
対面の日もまじかですね。とにかく、写真楽しみにしてます。
そうなんですね。私は洋食全般に好きです。てんぷらは好きですが、お寿司はもっと好きです。それだとお寿司さんか??
ズーズー弁で羽後の「かめだは変わりないですか」にしときますかね??
21日にPDI完了したみたいですが、未だに搬送されてません泣
新担当者ともやり取りがちぐはぐでして・・・
当初では本日が納車日でした。
僕の時は船便が二か月間全くなく(かなりヤキモキしましたが)、久しぶりの船便だったので日本に来てからスムーズでしたが、最近は船便も多く渋滞気味ということでしょうかね。それにしても早く対面したいですよね。ただ、M田さんの話だと、陸送はいきなりフェックスが届くらしいので、PDI完了していれば、近いうちに対面できるとものと信じたい。こちらも写真を早く見たーいッ!まあ、僕が叫んでも仕方ないのですが。
それから、ふと気が付いたのですが、僕が東京に行くと、名古屋方面から、もうちょっと言うと、伊勢方面から東京にやってきたことになり、東京に住んているお寿司さん、じゃなかった、てんぷらさんとゆうこに行くのは、僕が三木巡査の位置づけかと・・・!ヘルメットかぶっていくことにします(笑)。
お寿司も好きなのですが、行くとしてもぐるぐる回っているところばかりなのですが、昔、上越で入った回転寿司は美味しかったなあ。
船便が2ヶ月もないのは途方に暮れますね・・・私の船の前にも入船があったので混雑してる模様です。
そうなんですねいきなりファックスとは。さすがM田さん、頼りになりますね。私のNEW担当者は私に送るはずのメールを自分(NEW担当者自身)に送ってたみたいで全く音信不通になってました(笑)今日お会いして天然ですか?と聞きましたが、天然ではありませんと否定してました。たぶん天然だと思います(笑)
伊勢参りついでで、フルフェイスのヘルメットがいいかと(笑)
やっぱりぐるぐるですよね。でも地方のは美味しいです♪♪
やっぱり、フルフェイスのヘルメット必要ですよね。顔が判別付かないぐらいにされちゃいますからね。ダースベイダーみたいな恰好でフーハーフーハーしながら登場かな。危ない時はライトセーバーで右手をチョキンと!
思うに、その営業さん誰が見ても天然かと!それにしても、予想通り混雑しているわけですか。今週の土日あたりには対面できるといいですね。お祈りしています。