土曜日の夜、仕事から帰ると息子のトクチンより
「明日は、友達と映画を見に行くのでお父さんには付き合っていられないよ」
という衝撃的な告白を受ける。僕は無意識にフライロッド(毛バリ釣りの竿)をさきもりちゃん(我が家のDefender90)に積みだすが、それを見た奥さんは
「明日は、息子にフラれたので釣りにするの?」
と聞いてくるので
「まだ、決めたわけではないけど…!」
「いやいや、もう決めているよね。手に持っているものは何!」
「アッ!これはフライロッドか!それなら仕方ないので、釣りにでも行ってくるか」
「仕方ないじゃないでしょう!行きたいんでしょうが‼」
といった感じで、急遽、日曜日は釣りに行くことになった。朝6時出発、国道41号線をひた走り、下呂方面に向かう。僕にとって、飛騨川水系(益田川)の特に下呂周辺の川たちは、若い頃しょっちゅう通っていた所なので、急に行くことになっても、事前の予習をしなくても、安心して釣りまわることが出来る。飛騨川に沿って走る41号のカーブやそこからの景色はどれも気心が知れた友達のようなものだ。更に、カーブでの安定性がパジェロより数段上のディフェンダー90は運転していて極めて安心感が高い。あっという間に下呂に到着してしまった。萩原のコンビニで遊漁券を購入し、まずは上呂の山之口川を目指す。この川は飛騨山地の分水嶺(飛騨川か神通川)の一つ川上岳(かおれだけ)に端を発する川で、水もきれいで、お魚釣りにおいてもいい思いをいっぱいさせてもらってきているので、信頼感が高いのだ。

早速、釣支度だ。正面奥は位山かな。今日は秘蔵のバンブーロッドPrime Time Kurobe River Solitaireを使用し、優雅に釣り歩きたい!

結局全く釣れずにさきもりちゃんのとこでピクニックテーブル出して、昼飯の準備を開始。こんなはずじゃなかったぞ!

最近は、レトルトカレーばかりなので、ウィンナーとブロッコリーを塩胡椒で炒めてみた。自然の中だとこれでも美味しいものだ。
今日は、バンブーロッドビルダー(竹竿職人)の宮崎さん作成のカスタムロッド、Prime Time Kurobe River solitaire(黒部川一人遊び⁉)を使う。これは、僕が黒部上之廊下とその周辺の支谷の沢登や釣りに夢中になっていた2000年前後に、僕の釣りの状況に合うロッド(釣り竿)が欲しくて、宮崎さんにオーダーして作成してもらった宝物の竿なのだ。その頃、僕は自分で見よう見まねでバンブーロッドを作ったりしていたのだが、宮崎さんと出会い、彼の工芸的な作品を見て、そのあまりの美しさに心酔し、「ロッド作成は彼に任せて僕は黒部川に集中した方が適材適所だなぁー」と思ったのだった。当時、出来上がってきたロッドは気品があり、あまりに洗練されていて、使用してキズが付くのが嫌で飾っておくことが多かった。その後、育児などで釣りから遠ざかり、ここ2~3年、再び、フライフィッシングを楽しむようになってきたのだが、フライロッドは使ってこそ、その本領を発揮するというもので、飾っておいては逆にもったいないと思えるようになったのだ。それに、歳も50を超えて、バンブーロッド(竹竿)が似合う年頃になってきたのではという思い込みもある。カーボンロッドでの釣りが新型ディフェンダーで高速や野山を駆け巡ることに例えたとすると、バンブーロッドでの釣りは旧型ディフェンダーでフラットな林道を優雅に走るような感じだろうか。旧型のクラッチは重く、雨漏りするのと同じように、バンブーロッドはカーボンよりは重く、固有振動数も小さいので優雅に振らなくてはいけない。それに、使用後はしっかりと水分をふき取ってからしまう必要があるわけで、手間をかけることも含めてそれを楽しめないといけないし、そう言う遊び方ができるようになったと自分のことを思いたいという気持ちもある。
さて、山之口川はどうだったかというと、8時ごろから釣りをはじめて、昼まで全くの魚の気配を感じられることがなかった。さきもりちゃんの所に戻って昼飯を食べ、少し場所移動して釣ってみるが、ここは釣れるでしょう的な一等地でも全く反応がない。こうなってくると『ボウズ(一匹も釣れないこと)』という文字が頭をよぎり、焦りが体の動きをぎこちなくし、速いテンポで竿を振るようになってしまう。すると、糸が釣り竿に絡んだり、糸同士が絡んだり、毛バリが木に引っかかったり、しまいには、リールが川の中にドボン。もう優雅さとは程遠い状況になっていった。予定では、きれいな魚が釣れて、それを写真に撮って中さんに送り付けてマウントを取り、「どうだあ」的なやり取りを考えていたのだが(これって大人的でないかも!)、もはやそれどころではない。冷静に状況分析してみると、水温が低い(水温の低下は魚の活性を極端に低くしてしまう)と思われ、何故なら、ウェーディングシューズ内の足が冷たくて仕方ないからである。「もっと早く気が付けよ」と思うが、年に2~3回の釣りしかしていないので、状況判断が鈍くなってるのだろう。それに、山之口川で釣れないということが今までなかったことも判断の遅れに関係していたかも。そこで、もっと下流、下呂温泉街より下流側で飛騨川に流れ込む竹原川に場所移動することにした。

位山荘のところの橋からの山之口川の流れ。今日は全く持って沈黙の川だった。

竹原川の様子。木が覆い茂ったところの淵で25㎝くらいのアマゴが釣れた。

乗政川(手前)との分岐。奥(竹原川)の護岸されたところの淵で20㎝くらいのアマゴが2匹。
竹原川に行くと、ウェーディングシューズ越しに感じられる水温が全然暖かく、川面の様子からも「これはいける」と思われた。一投目で、25㎝の良型アマゴ君が釣れて(写真撮ろうとして、スマホをゴソゴソ出している間に逃げられてしまったが)、その後も20㎝くらいが3匹、ちびアマゴ、ちびイワナ2~3匹とどんどん釣れて、最初からこの竹原川、乗政川に入っていれば良かったなあと思ってしまうのだった。まあ、しかし、山之口川は釣れなくても、水がきれいで、川としても美しくそれだけでも価値があるのだけどね。

乗政川で釣れたあまごちゃん。可愛いよね。

一日川を歩き回って、充実した日曜日でした。
『ボウズ』という文字がチラついた時の僕の様子は、バンブーロッドを片手に優雅に釣りをする状況とは程遠く、まだまだ、僕は大人に成りきれていないなあと痛感するのだった。まあ、そうは言っても、アマゴちゃんが釣れたから良しとするか。帰りはさきもりちゃんと41号線をひたすら名古屋へ向けてドライブを楽しんだのは言うまでもない。
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