それはある晴れた日の午前中のこと、おそらく職場に向けて車を走らせていたのだと思う。東山動植物園の山の上の直線コースに差し掛かったちょうどその時、対向車が300~400m先にぽつんと一台現れ、こちらに向かってきた。黒光りし、威圧感があり、異様な雰囲気に僕の視線はその車にくぎ付けとなった。相手はどんどん迫ってくる。直線的で、現代の真ん丸なデザインのSUVとは明らかに一線を画し、独自のデザインだ。昼間点灯されているヘッドライトは円形の光を放ち美しい。そして、すれ違い、僕の視線は背面に…。瞬間的にそれが新型ディフェンダー110であると感じた。ルームミラー越しにその黒光りする奴を見送り、職場への左折すべき交差点を直進し、気が付くと名古屋の中心部栄に向かっていた。栄の中心部にはランドローバー中央というディフェンダーのディーラーがあって、その前を通ってさきっきすれ違った車がディフェンダーかどうかこの目で確かめたくなったのだ。運よくディーラーの前の交差点は赤信号に引っかかり、じっくりと店内の展示車を眺めることができた。「間違いない!ディフェンダーだ」僕の先ほどの感じは確信に変わり、旧型の雰囲気を背面やアルパインライトの所に残しながらも、ここまで斬新に変えてきたのかと感動と衝撃を覚えながら、職場に向けてステアリングを切っていた。

これは中さんのアーバンナイトディフェンダー。初めてすれ違ったディフェンダーとは違うと思うけど、イメージ的にはまさにこんな感じ。衝撃的な出会いであった。
その時に知ったのだが、当時(2020年の春頃!?)納車には半年ほどかかっていて、納車までの間、他のランドローバーの車に乗りながら待てます的なフェアーをやっていた。まだ、コロナは始まっておらず、もちろん半導体不足でもなかったはず。人気ありすぎて納車に時間がかかっていたのだろう。それにしても700万円前後の車がそんなに売れているとは僕のような庶民からするとちょっと信じられなかった。当時の僕の車は大好きなパジェロZR5MTだった。17~18年乗り続け、走行距離は25万キロで至る所故障が起こり、クーラーは壊れ、1~2速にギヤを入れてアクセルを踏み込むとガクンガクンとなりながら発進するし、エンジンの温度がここにきて上昇し高めの値を示していた。行きつけの整備工場の人からは修理費70万以上と言われていて、しかし、「仮に払って直しても完治する保証は持てませんよ」と念を押されていた。それに追い打ちをかけるようにタイヤ交換の必要性もあった。まさに満身創痍であり、一刻の猶予もない状態。当然ディフェンダー購入なんて頭の片隅にもなかった。このような状態だったので、1年ほど前からネットで中古車のパジェロをチェックし続けていて、その年の11月頃に2011年制パジェロGR5MT、走行距離4万キロを見つけた。パジェロは2世代目(インタークラーターボ2800)に10年20万キロ乗って、都市部の排ガス規制で現在3世代目のパジェロに乗り換えていたのだ。そして、この目を付けた中古車は4世代目の最終型、それもMT最後の年のタイプではないか。値段は200万円なので即購入を決め、中古屋さんに行って契約してきた。帰ってきた僕に妻は「もうこれで、次の車はカローラとかにして。ディフェンダーとか絶対に言いださないで頂戴」と言い放った。僕はボソボソと言葉にもならない受け答えをしてその場をやり過ごした。ただ、決して「はいわかりました」とだけは明言しなかった。
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