Cafe Lagrange (晴耕編 烏帽子岳から三国岳への縦走!下山路は阿蘇谷 2025.10.29)

Cafe Lagrange 晴耕編

 一昨年の今頃、白山の『三方崩山』に登ろうと思ったら、降雪があり雪山は無縁の防人としてはあきらめ、名古屋近郊の低山に登ったのだった。昨年も同時期に再び『三方崩山』に登ろとしたが大気の状態不安定で、同地区に雷警報が出ていたためあきらめて、『大川入山』に変更したのであった。今年こそは登るぞと意気込んでいたのだが、白川合掌集落周辺にクマ出没多数となり、また、観光客がクマに襲われてケガをしたこともあり熊警戒警報が発令されているらしく、入山は控えてくれということで、更には奥様からも『三方崩山登山禁止令』が出されて今年も断念せざる負えなくなってしまったかわいそうな防人なのである。

 それにしても近年の熊被害は異常だ。諸説あるようだが、「2022年にドングリなどの木の実が豊作だった時期に繁殖したクマが、23年あたりから増加し始め、今年の木の実の不作などとも相まって現在の凄惨な状況の原因となっている」と説明する専門家の意見はそれなりに説得力があるが、それなら、以前にも同じことがあってもよさそうなものである。昔はマタギという熊や鹿などの大型獣を狩ることを主な生業とする森の番人たちが多くいた。また、熊のたんのうが高値(現在の価格で200万円くらい)で取引されていた時代もあって、それを目当てに多くのハンターが森に入っていって、そのために大型獣が増えすぎることはなかったのだろう。その後、山村の過疎が進み、マタギも減少、動物愛護法などにより熊、鹿やイノシシなどの動物が守られ過ぎたため、近年では熊の頭数は昭和の時に比べて2倍から4倍までに膨れ上がっているらしい。そのような状況に22年から24年にかけて熊の急増が今年の異常事態の原因なのだろうか?

 この熊被害の中で、特に気になるのが最近秋田、岩手を中心に起こっているツキノワグマによる食害事件である。本来、ツキノワグマは草食で大人しく、警戒心が強いので、人を見るとすぐに逃げていく傾向があるといわれてきた。偶発的に近距離で遭遇した時は傷害事件になることはあったが、そのような事例も含めて、人間が殺傷されることは稀であったはずだ。ところがである。16年に秋田の十和利山で「スーパーK」と呼ばれた熊により4人の死者、4人の重軽傷者が出る食害事件が発生。この事件にかかわった熊は複数頭いて、主犯格の雄熊が「スーパーK」と呼ばれた。24年5月には秋田県鹿角市十和田大湯で5月中旬、タケノコ採りで山に入った60代の男性が熊に襲われ死亡する事件が発生。その男性の遺体を搬送する際に警察官2名も襲撃されたことは記憶に新しい。そのため、遺体の収容作業は手間取り一週間以上もかかり、その間に遺体は見るも無残に食い荒らされていたという。そして、今年の一連のツキノワグマによる食害事件も合わせて見ていると、「明確に人間を餌として狙っている」、「攻撃性が異常に高い」、「捕獲した人間を木の葉で隠すとか、捕獲物に対する執着が強い」などの点を並べてみると、「これってヒグマ?」と思ってしまうぐらいなのだ。ちなみに、北海道のヒグマの食害事件については、木村盛武著『慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』が詳しくて、客観的でなかなか参考になる。

 ここで、ふと思い出すのは、今から10以上前の2012年に、秋田県鹿角市にあった「八幡平クマ牧場」で、飼育されていたヒグマ6頭が檻から脱走。従業員女性2名が襲われ、犠牲となった事件である。当園では経営難から飼育してた熊を餓死させる方針が取られていたという話で、本来は130頭ほどのヒグマが飼育されていたらしいが、事件当日の頭数はわずか30頭。管理もずさんなもので、それぞれの熊の記録は一切なく、熊の死体をどのように処理したかはまったくわからない状態だったという。そして、地元の人々の間では「逃げ出したヒグマは6頭だけではなく、もっと多くのヒグマが周囲の山林に逃げ延びていった」という噂がまことしやかに語られているのである。そして、「周囲のツキノワグマと交わることで、ハイブリッド化が進んでいるのではないか」という専門家の意見もあるくらいなのだ。ヒグマの攻撃性とツキノワグマの立体分析能力が融合した”ハイブリッドベアー”!もし、本当ならとても恐ろしい話である。

 こんなわけで、今回は「三方崩山」は諦めて、はるか南、関ケ原の南に位置する烏帽子岳・三国岳(鈴鹿山系の北端部)の縦走を行うことにしたのである。「えぼし」と名の付く山は日本全国で70座ほどあるようだが、防人の中で一番有名なのは北アルプス裏銀座に鎮座する『烏帽子岳(2628m)』である。もちろん、山の形が昔の偉い人が被っていた帽子である「えぼし」に似ているから(今回のアイキャッチ画像参照。この写真は国道306号線沿線の下山という集落から撮影)そのような名前がつけられているのだろう。山頂からの眺めも良いらしいのでブラックなアーバンディフェンダー110君と共にワクワクしながら現地に向かったのである。

 ボキ(防人)がいつもかぶっている帽子(青矢印)が「えぼし」であーる。この形に似ている山は「烏帽子岳」、岩だったりすると「烏帽子岩」と名前がついていることが多い。「富士山」とか「駒ヶ岳」なんかも全国にいっぱいあるよねぇー!
 京都に行くときにいつも通る東海大橋からの長良川上流方向の眺め。左から養老山系、中央が伊吹山。
 通勤ラッシュ?で混んでいて、橋の中央部で停車したので写真撮り放題だ。こちらは長良下流方向の様子。今日もいい天気だぁ。
 登山口の時山という集落に向かう途中に、第一発電所のモーターについての展示があったので思わず見物。
 時山バンガロー村(文化伝承館?)に駐車しようとしたら、定休日だったので、道沿いの広場にアーバンディフェンダー君を駐車。イワナ、アマゴ、釣り!???
 さてッ!登り始めますか。2年前に自転車でコケタときに激しく打ちつけた左膝が最近痛み始めたので、無理はできないなぁー(そんな状況でも登るんかいッ)!
 三分の一ほど登ると高圧電線の鉄塔下に出る。ここからの眺めは良い。見上げると美しい幾何学模様が天空に向かって聳え立っている。素晴らしい。
 これから向かう烏帽子岳が、木の合間から顔をのぞかせた。頂上へは681のピーク(写真左)を一つ越えて向かうことになる。
 左足をかばいながらなので、ペースが上がらず、登山口から烏帽子山頂(865m)まで1時間10分ほどかかってしまった。
 山頂からは北側が開けている。黄色矢印が「霊山」、緑が「谷山」、赤が「ソンド」。
 霊山より右に視界を移すと「伊吹山(橙色矢印)」が視界に入る。
 山頂は展望が思ったほどではないのと、風が強かったので、風の背後の登山道脇の石灰岩の露岩体で昼飯タイム。正面の黄色矢印は恐らく「鍋尻山(838m)」。
 県境稜線を縦走してこれから向かう「三国岳(890m)」(黄色矢印)が見える。緑矢印は「鈴鹿岳」、赤矢印が「ダイラの頭」かしら?なんてね。下山は青矢印に従って阿蘇谷を降下する予定。
 県境稜線はアップダウンもそれほど激しくなく、とても気持ち良いトレイルだ。紅葉にはまだ早いようだが、それでも木々は色づき出している。
 三国岳への登りでは石灰岩の露岩体を歩く。藤原岳から伊吹山にかけては石灰岩質で至るとこにカルスト地形を見ることもできる。梅雨以降はヒルの産地でもある。
 三国岳への登りで振り返ると、今まで歩いてきた県境尾根の向こうに「烏帽子岳」(黄色矢印)を見ることができる。因みに、赤矢印の辺りが関ケ原だ。
 三国岳山頂が見えてきた。烏帽子から三国にかけての県境稜線は1時間15分くらいの所要時間。人に会うこともなく静かな山歩きを楽しめる。
 三国岳山頂(890m)に到着。トレイルをそのまま歩き続けると鞍掛峠から鈴北岳、御池岳方面に抜けることができる。
 山頂では、朝方デイリーヤマザキで買ったチョコレートドーナツを食べてしばしノンビリする。こういう時間が最高なのよね。
 赤矢印方向は「ダイラの頭」、「横根」を経て「五僧峠(島津越し)」へ。今回は黄色矢印で阿蘇谷を降下する。
 人はほとんど歩いていないようで、トレイルもよくわからない。ピンクリボンが唯一の印だが、はて、リボンはどこに?
 どうにか阿蘇谷にたどり着いたようだ。このコースはヒルの時期には最悪かもね。「ところで、ワイッはどこを歩けば?」
 所々に人工的な石積みが。これは炭焼き小屋の跡なのだろうか。トレイルは見失いがちだが、人工物の存在が安心感を与えてくれるよね。
 沢登りシューズを履いていると勘違いして、釣りの感覚で谷沿いを歩いてしまい、すってんコロリンとなり、手や足を擦り剝いてしまった。トレッキングシューズは本当によく滑る。勘弁してくれ。
 沢を渡ろうとした瞬間、イワナ(多分)が青矢印に従って横切って行った。こんなに名古屋から近いところでもイワナがいるとは、来シーズンはちゅりに来てあげますかな。
 やっと、はっきりしたトレイルが現れた。三国岳山頂からここまで2時間もかかってしまった。コケて擦り剝いたり、落ち葉のたまりを踏み抜いて淵にドボンしたり、ほんと大変な降下路だったのう。
 時山の集落にやってきました。この川でも釣りができるようなので、来シーズンはチョロッと来てみようと思った次第だ。この川に沿った林道は五僧峠(島津越し)へと向かう。今度は五僧から三国の間を歩いてみるかな。
 今回は熊とかイノシシとの遭遇に備えて、棒を拾って(赤矢印)、それを杖代わりに歩き続けたのだが、これが左ひざのサポートをしてくれたり、急傾斜の斜面で体を支える支点となってくれたり、体制崩した時の支えになってくれたり、本当に助けられた。まさに、"相棒"だった。そんなわけで、アーバンでブラックなディフェンダー110君に積んで一緒に帰ることにしたのだ。さーて、これから楽しいドライブだ。養老の焼肉街道では、「養老ミート」とか「肉の藤田」とかに立ち寄って、奥さんの説教覚悟で飛騨牛衝動買いッ!というのはどうだろう。

  

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