ピヨピヨ釣日記 (2025.4.20 飛騨川水系某支谷 中さんとの初釣行)

フライフィッシング

 やる気のない魚は嫌いだ。こっちが必死に毛バリを流しているのにもかかわらず、全く無視、または、無反応の状態が続くと堪忍袋の緒が切れてしまう。自然豊かな川をフライロッド片手に歩けているだけでも十分素晴らしいことなのかもしれないけど、修行途中の防人にはやっぱりお魚さんが釣れてこないと駄目なのだ。魚がやる気がない理由として、水温が低い場合が挙げられる。解禁当初の2月とかだと、水温が低いため魚の活性が低く、毛バリを流しても全く相手にしてくれないのだ。去年の2月の当貝津川ではひどい目に合った(と言っても坊主だったというだけのことだが)。だから、「今年は水がぬるみ、魚さんのやる気が出てくる5月頃から渓流を歩こうかなあ」とのんびり構えていたのだった。

 そんな、のんびりモードの防人の所に、

「岐阜飛騨川水系のA谷に行こうやッ」

と中さんから誘いのラインが入る。岐阜のA谷はまだまだ冬真っ只中ではないのか?と不安がよぎる。ガッ、釣から遠ざかっていた20年間で防人の河川状況に関する感覚はマヒしてしまったのに対して、中さんは毎年岐阜・富山の河川に通い続けていたのだから、彼に従った方が良いだろうと思い直し、国道41号線の下呂市のコンビニデイリーヤマザキで落ち合うことにしたのだった。

 ディリ―ヤマザキで中さんレンジローバーと落ち合った。
 飛騨川に沿った谷筋には桜が咲き乱れ、春爛漫だ。ハナモモ、八重桜も同時に咲いていた。

 中さんのレンジローバーと我がディフェンダー(さきもり号)は林道に突入した。しばらく行くと、舗装が切れる手前に広場があり、そこに中さんのレンジは停車した。

「ここから先はダートだから、防人のディフェンダーで入ることにしよう」

「アレレッ!中さんのレンジローバーは砂漠のロールスロイス(つまりオフロード性能抜群)と言われているよね」

「あのさぁー、レンジは晩餐会に乗り付けることが出来る唯一のSUV車両なわけよーッ。だから泥は似合わないよね。ディフェンダーはさぁー、ワークホース的車だから泥が似合うようにデザインされているでしょッ」

「…」と言う感じで、さきもり号に乗り換えて二人で林道に分け入っていくことになったのだ。ダートに入り1㎞くらい行くと、倒木が道を塞いでいた。

「僕がどけてきます」

と中さんは素早く外に出て、倒木除去を行い、どうぞお通り下さいと手で合図してくれた。通過後は律儀にも?その倒木を再び戻し、我々とさきもりちゃんは奥へと分け入っていく。2㎞くらい行くと更に大きな倒木が行く手を阻むが、お魚さんに目がくらんでいる我々の進撃を停めることは出来ない。何とかどけてさらに奥に進む。この倒木以降林道は荒れだした。斜度が増し、落石が至る所にあり、それをよけると谷に落ちてしまうので、落石に乗り上げながら進む。林道は急激に高度を上げ、川との落差も激しくなる。しまいには雪崩の残骸が道を横切るようになった。雪崩痕に轍が全くないことから、この谷への侵入者は今シーズン我々が一番乗りであったことを知る。チャンスだ。谷に落ちないように祈りながら、雪崩痕にさきもりちゃんを乗り上げる。電子制御アクティブディファレンシャル(電子式リアデフロック機能)が常時作動し、浮いた車輪の空転を制御し、接地タイヤに駆動力を伝える。極めて安定した走りである。このように荒れた林道であっても、通常モードで(Lowレンジ四駆モードやダートモードに切り替える必要なく)走り切ってしまったのだ。まあ、至る所木の枝が飛び出していて、そのいくつかは中さんが外に出てあたらないようにしてくれたが、すべてという訳にはいかず、キキキィーツ、キュルキュルキュルガリガリ君君君と音がして、スリキズの勲章が何本か付け加わったが、さきもりちゃんとしては水を得た魚のように生き生きとしていたように思う。やっぱりディフェンダーはこのような道が似合う車だなあと痛感した。

 林道に入ると、冬の気配が残りまくりの雰囲気だった。途中、ニホンカモシカにも出会った。クマさんにだけは出会いたくはないが…。
 二回目の倒木を過ぎると、林道は荒れだした。雪も現れ始め(夏タイヤに換えてしまったぞ!)、落石痕が至る所に。核心部分の写真は撮る余裕なしだった。
 林道終点には広場があり、そこで我々は釣支度開始。その傍らには荒れた林道を走りご満悦のさきもりちゃん。この瞬間はまだ見ぬお魚さんとの出会いに期待が膨らみ、いつになってもワクワクする。
 谷に降り立つと、まだ冬真っ只中のような雰囲気だ。半信半疑で毛バリを投入すると、いきなりバシャッと反応が。無意識に合わせるとお魚さんの手ごたえ!しかし途中でバレてしまった。どうもこの谷の魚はやる気満々らしい。
 ふと見上げると冬の気配が漂う木々と空に覆われていた。この日は曇りで気温はそれほど高くはなく(寒くもないが)、夕方からは雨の予報だった。
 谷は冬の気配だけど、お魚さん達はやる気満々だ。これは中さんが釣り上げたアマゴ。朱点が少なく、恐らく天然魚と思われる。美しい魚体に思わず二人でうっとり!
 こっちはイワナ(ヤマトイワナ)。朱点が多く原始的雰囲気(こちらが勝手にそう思い込んでいるだけだが!)が漂う不思議な魚体だ。イワナは川ごとに変異が激しい魚であり、分類を巡っては未だに諸説ある状況。
 この日最大のイワナは26㎝!中さんが釣り上げた。フッキングの正確さによりサイズ、数ともに中さんが圧倒することに。防人はバラシ極めて多く、課題が残ることになったわい。
 雪渓が流れ込む谷を釣る防人。この景色は明らかに冬のように感じるかもしれないが、谷のイワナ、アマゴ君たちはかなりのやる気に満ち溢れているようだった。中さんの適切な川選びで、とてもエキサイティングな一日を過ごすことが出来たのである(フィッシングだけでなく、オフロードドライビングもね!)。
 腹が減っては釣りが出来ぬ。カボチャのポタージュ、銀座のキーマカレー、ミンチ肉と玉ねぎが入ったバター風味チャーハン(カレーかけるので薄味ね)が今日のランチメニュー。二人分までなら極めて手際よく作れるようになった防人である。
 この堰堤まで釣り上がって行った。堰堤の淵では数多くのイワナちゃんに相手をしてもらった。そのうちの一匹は、合せを入れた瞬間に手が止まり、絞り込まれるように竿が持って行かれた。バレてしまったのだけど、釣り上げていたら1メートルはあっただろう(な訳ないぞ)。

 中さんのおかげで、多くのお魚さんに出会い、さきもりちゃんの所に戻ってきたのだった。これから先、再び荒れた林道を戻らなくてはいけない。途中で落石の激しい奴が発生していたら、完全に閉じ込められてしまう(我々は通り抜けられても、さきもりちゃんは林道が修復するまで何カ月も山の中に残したまま?)。林道状況が激変していないことを祈りながら、ヒルディセントコントロールを作動させ、急な林道を注意深く降って行ったのだった。

 朝、中さんと落ち合ったデイリーヤマザキに立ち寄り、パンとかコーヒーとかを買って、中さんは京都へ、防人は名古屋にそれぞれステアリングを切った。帰路は激しい雨となり、おかげで泥だらけになっていたさきもりちゃんの車体は名古屋にたどり着く頃までにはきれいさっぱりとなったのだった。

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