ピヨピヨ釣日記 (2024.6.5 フライフィッシング プロショップ ワチェット〈Watchett〉)

フライフィッシング

 フライフィッシング(西洋式毛バリ釣り)という趣味は、もちろん、釣に行く時こそが最大にワクワクするわけであり、そこでお魚さんが釣れようものなら、『我が人生悔いはなし』と思えてしまうぐらいの影響力がある。この趣味にはまり込めばはまり込むほど社会的出世を望まなくなる。出世してしまうと、釣に行く時間が無くなってしまうからだ。だから防人は釣りバカ日誌の浜ちゃん同様万年平社員のままである。イヤッ、待てよ、釣にうつつを抜かしているから、仕事が疎かになり出世できないだけかもしれない。何れにしても、釣に取り付かれてしまった人間には社会的地位はどうでもよいことであり、それよりも自分が釣ったイワナのサイズが釣りの世界でどのような位置なのかの方がはるかに重要なことになるのだ。

 「今日はハンバーグのお肉を丸明に買いに行く」と言って家を出た防人であった。サイクリング時に良く通るふれあい緑道でホカ弁を食べ、のんびりサイクリングをしながら真の目的地を目指す。敵(⁉)の目を欺くために、わざと遠回りをするのだ。
 ワチェットでリールを眺めながら、鈴木さんと防人の秘密の会話が繰り広げられる。手前の黒いリールは○グ○イ○○にはよく似合いそうだ。このリールの替えスプールにはシンキング(沈むタイプ)のシューティングラインを装着したいものだ。妄想が…!アブナイ会話だ。

 そんな釣り人にとって、釣場に行くことは人生に意味を与えるために極めて重要な行為なのであるが、その営みに勝るとも劣らない重要な行為が、釣道具のショップに行くことなのである。ショップは、釣り竿、フライリール(フライラインを巻いておくもの)、毛バリを巻く道具、釣場で使うベストや川を歩くためのウェーディングシューズ、小物などが所狭しと並べられ、その道具たちの真っ只中に身を置き「今日は何を買おうかな?」とか「今度ボーナスが入ったらあの釣竿を買おう」と色々妄想の世界に埋没できる最高の場所なのである。また、俗世を捨てて釣道に邁進する魅力あるショップのオーナー(もしかしたら、魚を釣りたいという欲に駆られた世俗的なオーナー?)と釣り場や道具の話に時を忘れて熱中するのも最高のひと時なのである。防人にとって、このような場所こそがプロショップ ワチェットなのである。特に、若い頃は、オーナーの鈴木寿さんから午前中はキャスティングの指導を受け、その後はショップに流れ込み、半日以上入り浸り、他のお客さんと共に釣り談義に花を咲かせたものだった。そのまま、夜になり、寿さん達と夕飯を食べに行ったこともあったなあ。「時間を全く気にせずよくもまあ、そこまで釣り話をし続けられたものだ」と今から思うと感心してしまう。

 その後、15年くらいは育児に集中するようになり、釣の世界から完全に決別した生活を続けていたのだが、ここ2~3年、子供たちが防人の相手をしてくれなくなってきたこともあり、再び釣り症状が現れだしたのだ。それと共に、ポツポツとワチェットに防人が出没することが起こり出したのである。

 ここは防人の部屋。釣り竿、リール、ディフェンダーのマグカップ、サイダーの瓶、フィアット500のお皿、ぬいぐるみ、…。長い間の時を共に過ごしてきた道具たちに囲まれて、至福の時を過ごすのである。
 こちらはディフェンダーの和名「さきもり」の命名者Ya氏の書斎である。古典的なフライリール、硯、筆、書籍、石、…。これまた、好きなものに囲まれていて、極めて居心地が良い部屋である。

 ショップでの話は、時に深刻な、極秘事項についても語られることになるので、子連れで訪れる訳にはいかないし、ましてや、奥さんなどと一緒に行くのは論外だ。ショップでの営みは家族とは完全にディカップル(decouple)したものでなければならない。

 今回も、寿さんと防人との間の会話は極秘事項的な要素が多く、もちろん、ブログで全容を明かすことなど出来る訳がない。

「おーうッ!防人君久しぶり。元気してた」

「はい、元気してましたよ。さきもりちゃんはエンジンストールして元気ないですけどね。今日はですね、あの、赤いブランクの、ヒソヒソヒソヒソ…ヒソヒソ…!」

「それじゃあ、リールはヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ…。」

「やっぱり、イグ○○○に似合ったリールはブラックのヒソヒソヒソ…ヒソヒソ…、替えスプールにはヒソヒソヒソ…」

「チョット、メーカーに問い合わせてみるわ!…あーもしもし、スズキですーぅッ!○○ナイターの490ですけどぉ―・・・・それと、リールの○○○・・・・、はいッ!わかりましたぁー、どうも失礼しまーす。・・・防人君、ヒソヒソヒソ…だって」

 こんな感じの会話が、今日も未来も、日本、いや、世界の釣りショップで家族世界と完全に切り離された会話が繰り広げられていることだろう。このようにフライフィッシングプロショップは釣り人が、家族と向き合う姿とは全く異なる、本来の裸の自分と向き合い、実存的意義を噛みしめる唯物弁証法的なところなのかもしれない。

追記 その後、例の極秘事項物の受け渡し、防人部屋への搬入無事に終わり、秘密裏に記念撮影が行われたのだった。

 これはとても危険な写真だ。良い子はくれぐれも真似をしないようにね。

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